2026年8月31日、IPAが情報処理安全確保支援士試験のサンプル問題を公開しました。2027年度から始まる新試験制度の、科目Bのものです。
正直に言うと、公開されるまでは半信半疑でした。「出題形式の変更」とだけ案内されていて、中身が何も分からない状態が1年近く続いていたからです。
読んでみて、思っていたより大きな変更でした。形式が記述から選択に変わる、という話にとどまりません。得意な問題を選んで勝つ、という戦い方そのものが無くなります。
この記事では、公開された資料から読み取れることだけを書きます。そのうえで、記述式の午後試験を実際に通った立場から、対策がどう変わるのかを考えます。
- 2026年8月31日にIPAが公開した、科目Bのサンプル問題とシラバス案の中身
- 科目Bが12問20設問になり、そのうち4問は設問が3つずつ付く構成であること
- 1問3答に「全ての設問が必須解答」と明記され、問題を選ぶ余地が無くなると読めること
- 解答が解答群からの選択になり、選択肢の数は3つから8つまで幅があること
- 記述式の対策を積んできた人にとって、何が使えなくなるのか
- まだ分かっていないこと(配点、部分点の有無、難易度)
結論:形式が変わったのではなく、勝ち方が変わった
先に結論です。科目Bは、記述で答える試験から、解答群から選ぶ試験になります。そして4問から2問を選ぶという工程が消えます。
公開されたのは2つです。シラバス案(Ver.0.1)と、科目Bのサンプル問題。どちらも2026年8月31日の掲載です。
サンプル問題の冒頭に、出題構成が書かれていました。ここが今回いちばん大きい情報です。
| 形式 | 1問あたりの設問数 | 問数 | 設問の合計 |
|---|---|---|---|
| 1問1答 | 1 | 8問 | 8 |
| 1問3答 | 3 | 4問 | 12 |
| 合計 | — | 12問 | 20設問 |
すでに「120分12問」という数字は公表されていました。その12問の内訳が、ここで初めて示されたことになります。
そして1問3答のほうには、括弧書きでこう添えられています。全ての設問が必須解答。選択の余地は無い、と読むしかありません。
出題構成を、現行の午後試験と並べてみる
数字を並べると、違いがはっきりします。
| 現行の午後(〜2026年度) | 新制度の科目B(2027年度〜・案) | |
|---|---|---|
| 試験時間 | 150分 | 120分 |
| 問題数 | 4問 | 12問 |
| 解答する数 | 4問中2問を選択 | 12問すべて。設問は20 |
| 解答形式 | 記述式 | 解答群から選択(サンプル問題での形式) |
| 1つあたりの時間 | 1問75分 | 1設問6分 |
まもる
しろ1設問6分というのは、単純に120分を20で割った数字です。実際には長文を読む時間が要るので、設問だけに6分かけられるわけではありません。
それでも、150分で2問を仕上げていた試験とは、頭の使い方が別物になります。
解答は「解答群から選べ」だった
サンプル問題では、2問が公開されています。1問1答から1問、1問3答から1問です。設問の数でいえば4つ。
その4つとも、指示は同じでした。解答群のうち、最も適切なものを選べ。記述を求める設問は1つもありません。
ここで意外だったのが、選択肢の数です。四肢択一ではありませんでした。
| 設問 | 解答群 | 選択肢の数 |
|---|---|---|
| 1問1答の問題 | ア〜ク | 8 |
| 1問3答の設問1 | ア〜カ | 6 |
| 1問3答の設問2 | ア〜ウ | 3 |
| 1問3答の設問3 | ア〜キ | 7 |
3つから8つまで開いています。8択の設問は、2つの要素の組合せを選ばせる形でした。3択の設問は、短い動作の中から1つを選ぶ形です。
選択肢の数が一定でないと、消去法の効き方が設問ごとに変わります。8択のほうは、組合せの一部が分かるだけで候補を半分に減らせます。3択のほうは、そういう削り方ができません。
1問目がマネジメントの問題だった
もう1つ、見落としにくい変化があります。公開された2問のうち、1問目が技術の問題ではありませんでした。
題材は情報資産台帳の整備です。上場企業が内部監査で指摘を受け、台帳を作ることになった。各部署から質問が来て、それに答える、という設定でした。出題趣旨にも、各部署からの質問に的確に助言できる能力を問う、と書かれています。
IPAは新制度の説明で、科目Bの出題範囲についてマネジメント分野の強化を挙げていました。その言葉が、サンプルの1問目にそのまま出た形です。
2問目は、Webアプリケーションのセキュリティ診断でした。脆弱性を読み取って、修正方法を選ぶ。こちらは従来の午後試験に近い手触りです。
2問だけで傾向を語るのは乱暴ですが、片方がマネジメント寄りだったという事実は、対策の配分を考えるうえで無視できません。
そのうえで、1つ書いておきたいことがあります。この種の問題は、実務で見ている人が有利だと感じました。
筆者は現場で情報資産の管理に触れる立場にいます。台帳に何を書き、どこまでを1つの資産としてまとめるか。評価値をどう決めるか。こうした判断は、手を動かしていると自然に身につきます。逆に、参考書の記述だけで組み立てようとすると、意外と迷います。
サンプル問題の1問目は、部署から来た質問に答える形でした。台帳を作った経験があれば、質問の背景まで想像がつきます。そこが解答の速さに効くはずです。
もっとも、これは裏返すと不利にもなります。自分の職場のやり方が身についていると、それを正解だと思い込む危険があるからです。組織によって台帳の粒度は違います。実務経験は有利に働くけれど、そのまま当てはめると外す。そういう種類の問題だと見ています。
ここが落とし穴
読み間違えやすいところを、先に潰しておきます。
「多肢選択式に決まった」とはまだ言えない
サンプル問題の設問は、すべて解答群から選ぶ形でした。ただし、IPAが形式の名前を明記した資料は、筆者が見た範囲では見つかっていません。
同じ日に出たシラバス案も確認しましたが、こちらにも書かれていませんでした。シラバス案は冒頭で、自身の役割をこう定義しています。出題範囲を詳細化し、目標とする知識、技能の幅と深さを明確化したもの。つまり出題形式は、そもそもこの文書が扱う対象ではありません。
出ているのはサンプルとシラバス案であって、試験要綱ではありません。「サンプル問題ではこうだった」までが、いま言える範囲だと考えています。
サンプルは2問。難易度も配点も分からない
公開されたのは12問のうち2問です。1問1答が8問あるうちの1問と、1問3答が4問あるうちの1問。
配点は書かれていません。1問1答と1問3答で重みが違うのかどうかも不明です。部分点があるのかも分かりません。記号で答える以上は無さそうですが、そこも明示はされていません。
まだ「案」の段階
シラバスはVer.0.1です。確定版ではありません。番号の付き方からして、これから版が上がります。
いま読み取ったことは、確定版で変わる可能性があります。この記事も、版が上がったら書き直すことになります。
2026年度の試験には関係しない
念のため書いておきます。ここまでの話は2027年度からの新制度のものです。2026年度の科目Bは、出題形式も出題数も試験時間も変わりません。150分で4問中2問、記述式のままです。
2026年度の日程と、CBTになって何が変わったのかは別の記事にまとめています。いつ受けるかを先に決めたい人は、そちらから読んでください。

筆者の立場からの考察
ここからは、記述式の午後試験を実際に通った立場からの見方です。
最初の10分でやっていた作業が、まるごと不要になる
現行の午後は、150分で4問中2問を選びます。合格した回を振り返ると、勝負は解き始める前についていた気がします。
どの2問を選ぶか。設問をざっと読んで、自分が言葉にできそうな問題を見抜く。ここに最初の10分近くを使っていました。この見極めが外れると、120分かけても書けずに終わります。
選ぶ基準は、はっきりしていました。得意分野かどうかです。設問の読みやすさで選んだことはありません。自分が中身を分かっている領域を取りにいく。それだけでした。
新制度では、この工程が消えます。全問必須なら、選ぶ必要がありません。得意な分野で稼いで、苦手な分野を避ける。この組み立てが使えなくなります。
正直なところ、これは筆者にとって痛い変更です。分野の得意不得意の差を、選択でならしていた自覚があるからです。
4問から2問をどう選ぶか、という話は以前に一本書きました。2026年度までは、この選び方がそのまま得点に効きます。

部分点で粘る戦い方も、たぶん効かない
記述式には部分点があります。完璧な解答が書けなくても、設問の要求に沿った要素を並べれば、いくらか点は拾えます。
筆者の場合、これに助けられました。核心を外していても、周辺を正確に書いて食い下がる。そういう答案がいくつもあったはずです。
記号で答える形式なら、正解か不正解かのどちらかになります。部分的に分かっている、という状態が点にならないわけです。
では、悪い話ばかりかというと違う
ここは公平に書きます。記述が無くなることで、救われる人もいます。
文章を組み立てる速度で落ちることが無くなります。日本語の書き方で減点される心配も要りません。知識はあるのに答案の形にできず、時間切れになっていた人には追い風です。
覚えることが減るわけではありませんが、問われ方が「書けるか」から「見分けられるか」に寄ります。
自分がどちら側かを判定する
自分の勝ち方がどちらに寄っているかで、影響の大きさが変わります。
| あてはまるもの | 新制度での影響 |
|---|---|
| 過去問で、選ぶ問題によって得点が大きく変わる | 選択が無くなるので、影響が大きい |
| 解答の要素を並べて部分点を拾うのが得意 | その武器が効きにくくなる |
| 知識はあるが、記述の時間が足りずに落ちている | 追い風になる可能性がある |
| マネジメント分野を後回しにしている | 配分の見直しが要る |
| 長文を速く読むのが苦手 | 1設問6分の配分は厳しくなる |
上の2つに当てはまる人ほど、変更の影響を大きく受けます。
では2026年度中に受けるべきか、待つべきか。この記事では踏み込みません。判断には日程と申込みの話が絡むので、そちらは別の記事に譲ります。
判断の分かれ道
2026年度に受けるか、2027年度を待つか。この判断が、サンプル問題の公開で少し動きました。
| 判断軸 | 2026年度に受ける | 2027年度を待つ |
|---|---|---|
| 出題形式 | 記述式のまま。過去問がそのまま使える | 解答群から選ぶ形式になる見込み |
| 問題の選択 | 4問中2問を選べる | 全設問が必須解答 |
| 教材 | 対策本も過去問もそろっている | 公開されたのは案とサンプル2問だけ |
| 向いている人 | 記述の演習を積んできた人 | 記述が苦手で、これから始める人 |
| 読めないところ | — | 難易度、配点、部分点の有無 |
記述が苦手で、これから学習を始める人にとっては、待つ選択にも理があります。形式が自分に向く方へ変わるからです。
ただし「待てば楽になる」という保証はありません。形式が軽くなっても、問われる幅は広がる可能性があります。マネジメント分野の強化がそれです。
まとめ
- 2026年8月31日、IPAが支援士試験のシラバス案(Ver.0.1)と科目Bのサンプル問題を公開した
- 科目Bは1問1答が8問、1問3答が4問の計12問。設問の数では20設問になる
- 1問3答には「全ての設問が必須解答」と明記された。4問中2問を選ぶ形式は無くなると読める。ただし「12問すべてに解答する」と書かれた記述はまだ無い
- 公開された4つの設問は、すべて解答群から選ぶ形式だった。ただし四肢択一ではなく、選択肢は3つから8つまで幅がある
- 1問目は情報資産台帳を題材にしたマネジメント寄りの問題だった。台帳を扱った経験があると有利に働く一方、自分の職場のやり方を正解だと思い込む危険もある
- 記述式の対策が最大限に効くのは2026年度まで、というのが筆者の見方
- 配点、部分点の有無、難易度は未公表。シラバスはVer.0.1で、確定版ではない
引っかかった点
いちばん迷ったのが、「多肢選択式になった」と書いてよいかどうかでした。
サンプル問題の設問は、どれも解答群から選ぶ形です。そう書きたくなります。ただ、IPAが形式の名前を明記した文を見つけられませんでした。サンプルは例であって、定義ではありません。
なので本文では「サンプル問題ではこうだった」という書き方に統一しました。確定版のシラバスか試験要綱で形式名が示されたら、そこで書き換えます。
もう1つ。1設問6分という数字は、120分を20設問で割っただけのものです。実際には長文を読む時間が別に要ります。目安として使えても、配分の設計にそのまま持ち込める数字ではありません。
参考にした一次資料
- 情報処理安全確保支援士試験 シラバス案 Ver.0.1(IPA、2026年8月31日掲載)——冒頭に「出題範囲を詳細化し、目標とする知識、技能の幅と深さを明確化したもの」と定義がある
- 情報処理安全確保支援士試験 科目B のサンプル問題(IPA、2026年8月31日掲載)
- 試験制度の見直しの検討状況について(IPA)
