送料が無料だと聞いて、ロケットナウを入れてみた。注文の直前で指が止まった。
こういう経験、ありませんか。私はこういうとき、注文より先にプライバシーポリシーを開く癖があります。半分は職業病です。指が止まる理由は「クレジットカードが危ないかも」ではなくて、もっと手前にある気がするのです。
自分の家の住所と電話番号が、会ったこともない誰かのスマホに表示される。その誰かは会社の社員ではなく、たぶん個人事業主です。表示された住所は、届けたあとどうなるのでしょうか。
まもる
しろ「ロケットナウ 安全性」で検索すると、決済の仕組みと運営会社の話が出てきます。どちらも間違っていません。ただ、指が止まった理由には答えていない。
この記事では、公式のプライバシー通知に実際に書いてある中身を読みます。住所が配達員に見える時間は、はっきり数字で書いてあります。
- 「安全性」という言葉が、3つのまったく別の不安に分かれていること
- 配達員に住所が見える時間が、公式文書に何分と書かれているか
- 配達が終わったあと、住所がどこに何か月残るのか
- 同意した覚えがないのに住所が渡る、その法律上の理由
- 電話番号について、住所と同じようには書かれていない点
- どのフードデリバリーでも使える、プライバシー通知の読み方
結論:「安全性」は3つの別々の不安に割れている
先に結論です。同じ「安全性」という言葉で、人はまったく違う3つのことを心配しています。
| 不安の種類 | 心配していること | 答えの見つけやすさ |
|---|---|---|
| ①決済 | クレジットカード番号が盗まれないか | 見つかる。検索すればすぐ出る |
| ②アプリ | ウイルスや怪しい権限がないか | 見つかる。同上 |
| ③配達員 | 自分の住所と氏名が、個人に渡ること | ほとんど出てこない |
検索候補に並ぶのは①が多く、実際に検索結果の上位も①と②に答えています。
ところが「ロケットナウ 安全性」で検索したときの1位は、Yahoo!知恵袋の質問でした。中身は③です。配達員に個人情報が渡ることで困っている、という相談が最上位に来ている。
つまり③は、言葉にしづらいだけで、確実に存在している不安です。この記事は③を主役にします。
①決済と②アプリは、短く済ませます
ここは他所と同じことを書いても仕方がないので、要点だけ。
ロケットナウは App Store と Google Play で正規に配信されています。非公式サイトから入手した改変版でなければ、アプリそのものにマルウェアが仕込まれている、という話ではありません。
決済については、公式のプライバシー通知に安全管理措置が並んでいます。通信の暗号化、侵入防止、24時間の監視、役割ベースのアクセス制御、従業員への定期的な研修。書いてある項目としては一般的な水準です。
ただし、書いてあることと、実際に運用されていることは別です。外から検証する手段は利用者にはありません。ここは「書いてある」までが確認できる限界だと思っています。
①②が気になって来た方は、ここまでで足ります。以降は③の話です。
本題:配達員に、何が、どれだけの時間渡るのか
ロケットナウの顧客向けプライバシー通知には、利用目的が項目ごとの表で書かれています。この表が、いちばん正直な資料でした。
住所の欄に、こう書いてあります。
配達の正確さとサービス品質をサポートするために、お客様の住所は配達処理中および配達完了後最長20分間、配達パートナーがアクセスできます
マスク化された住所は、ロケットナウドライバーが配達履歴を確認できるようにするために、ロケットナウライダーアプリで最長6か月間保存されることがあります
ロケットナウ 顧客向けプライバシー通知(発効日2025年1月6日/最終更新日2026年4月22日)
数字が2つ出てきました。整理します。
| いつ | 配達員から見える住所 | どこにあるか |
|---|---|---|
| 配達中 | そのまま見える | ライダーアプリ |
| 配達完了から20分間 | そのまま見える | ライダーアプリ |
| 20分を過ぎたあと | マスク化された形 | ライダーアプリに最長6か月 |
正直、この記述を見つけたときは意外でした。期間を分単位で書いている事業者は、そう多くないからです。「必要な範囲で提供します」で終わらせることもできたはずで、そうしなかったのは評価していい点だと考えています。
そのうえで、読み方を2つ補足します。
まず「最長20分間」は、上限であって実際の長さではありません。より短い可能性はありますが、利用者側から確かめる方法はありません。
次に「マスク化」が具体的に何を伏せるのかは、この文書に書かれていませんでした。番地まで消えるのか、建物名だけ残るのか。ここは分かりません。
氏名も配達員に渡ります
同じ表の氏名の欄には、利用目的が並んでいます。会員登録、識別、会員管理、パーソナライズ、不正行為の防止。そして最後に「ロケットナウドライバーがお客様の場所や目的地までナビゲートできるようにするため」。
この項目が氏名の欄に入っている以上、氏名は配達員側に渡ると読むのが自然です。
置き配の写真にも情報が写ります
見落としやすいのがここでした。収集する情報の一覧に、こういう項目があります。
その他:配達確認写真(玄関のドアや部屋番号などが写り込むこともあります)
置き配を選ぶと、玄関先の写真が撮られます。その写真に部屋番号やドアの様子が入る、と事業者自身が明記しています。
対面を避けるために置き配を選ぶ人は多いはずです。ただ、対面が減るかわりに写真が残る。トレードオフだと理解して選ぶ話だと思います。
なぜ、同意した覚えがないのに住所が渡るのか
「個人情報を渡すと同意した覚えがない」という感覚は、実はかなり正確です。法律の構造がそうなっています。
個人情報保護法では、本人以外に個人データを渡すとき、原則として本人の同意が要ります。ところが例外があって、その1つが業務の委託です。
個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)では、次の整理になっています。
| 条項 | 内容 |
|---|---|
| 法第27条第5項第1号 | 個人データの取扱いを委託することに伴う提供は、「第三者提供」に当たらない |
| 法第25条 | 委託元は、委託先に対して必要かつ適切な監督を行わなければならない |
配達は、注文を受けた事業者が自分でやってもいい業務です。それを外部に任せている。だから「第三者に売った」ではなく「委託した」になります。委託に伴って情報が動く場合は、個別の同意を取る必要がない、というのが法律の建て付けです。
同意した覚えがないのは、当然でした。個別には同意していないのです。
ただし、同意が要らないかわりに、事業者には委託先を監督する義務がかかります。実際、ロケットナウの通知にも「必要かつ適切な監督を行います」という表現が出てきます。法律の言葉をそのまま使った書き方です。
つまり構造としてはこうなります。渡らないのではなく、渡るが監督されている前提。ここが理解できると、不安の置きどころが変わると思います。
まもる
りんここが落とし穴
公式文書を通しで読んで、引っかかった点を並べます。どれも「違法だ」という話ではありません。読者が知ったうえで判断すべき点、という意味です。
電話番号には、時間が書かれていません
住所には「20分」と明記されていました。ところが電話番号の欄に並んでいるのは、用途が2つだけです。1つは「不正行為の防止と調査」。もう1つがこれです。
注文の調整、緊急の問題の解決、サポートなど、必要に応じたお客様との直接のコミュニケーションの促進
用途は分かります。ただ、配達員がいつまでアクセスできるのかは書かれていません。住所には期間があって、電話番号にはない。この非対称が、正直いちばん気になりました。
あわせて、この文書には電話番号を匿名化・転送番号化しているという記述が見当たりませんでした。「直接の」という言葉が使われているだけです。匿名化していないと断定はできませんが、していると読める根拠もありません。
配達員が、事業者と直接契約していないことがあります
配達パートナー向けのプライバシー通知に、こういう存在が出てきます。
代理店/車両管理オペレーター(ロケットナウドライバーが配達業務の実施を目的とする契約を締結する代理店又は車両管理オペレーターをいい……)
配達員が代理店と契約している場合がある、という意味です。すると情報が動く経路は、事業者から配達員への1本ではなくなります。事業者、代理店、配達員という段が増える。
段が増えると監督は届きにくくなる、というのがセキュリティの実務での一般的な理解です。委託先がさらに再委託する形は、どの業界でも管理が難しくなります。
個人情報が日本の外へ出ることがあります
これも通知に明記されています。
当社は、お客様の個人情報を……韓国、米国、台湾、シンガポール、インドを含む日本国外の国・地域に移転することがあります
本プライバシー通知に同意し、登録を進めることにより、お客様は、ご自身の情報が日本国外の国・地域に移転、保管、処理されることに同意したこととなります
登録を進めた時点で、国外移転に同意したことになる、と書かれています。読まずに進めた人も同意したことになります。
ただし、放り出しているわけではありません。同じ箇所に、移転先が個人情報保護法28条1項の基準に適合する体制を整えていることを確保するため、相手と適切な契約を結ぶ、とも書かれています。移転はするが契約で縛る、という立て付けです。
さらに、クレジットカード発行会社への提供については、提供先の国名を特定できないと事業者自身が書いていました。
海外に本社があるサービスへ個人情報を預けるときの見方は、買い物アプリでも同じです。別記事で、チェックの順番を整理しています。

保有期間に、具体的な数字がありません
住所の20分と6か月には数字がありました。一方で、情報全体の保有期間はこうです。
当社は、個人情報を、それが当初収集された目的を完了するために合理的に必要な期間、保有します。当社は、正当な事業目的(不正行為の検出および防止など)または適用される法律を遵守するために必要な場合、特定の個人情報をより長期間保管することがあります。
「合理的に必要な期間」がどれくらいかは書かれていません。この書き方自体は各社に共通していて、珍しくはありません。ただ、住所に分単位の記述がある文書の中では、対比が目立ちます。
もう1つ、「より長期間」にも数字がありません。不正の検出や法令遵守のために延ばせる、という書き方です。妥当な理由ではあります。ただ、上限が読めないことは変わりません。
位置情報はアプリを開いている間ずっと取られます
位置データの欄には「本アプリを開いている間およびサービス提供の間における、リアルタイムでのGPS追跡情報」とあります。利用目的には広告の提供も含まれています。
配達のためだけではない、ということです。気になる方は、OS側で位置情報の権限を絞っておくのが現実的な線だと思います。アプリを消す必要はありません。
| OS | たどる場所 | 選ぶもの |
|---|---|---|
| iPhone | 設定 → プライバシーとセキュリティ → 位置情報サービス → 該当アプリ | 「このAppの使用中のみ許可」 |
| Android | 設定 → アプリ → 該当アプリ → 権限 → 位置情報 | 「アプリの使用中のみ許可」 |
メニューの名称は、OSのバージョンや端末メーカーによって変わります。「常に許可」以外を選ぶ、と覚えておけば十分です。なお絞ると、配達状況の表示など一部の機能が使いにくくなることがあります。
権限の話をもう少し広げると、トラッキングの許可も同じ考え方で決められます。何を許すかの判断基準を別記事にまとめました。

筆者の考察:個人を疑うのではなく、期間と範囲で見る
ここからは私の見方です。
③の不安の正体は、たぶん「配達員が信用できるかどうか」という問いの形をしています。でも、その問いは答えが出ません。相手は毎回変わる個人で、こちらには何の情報もないからです。
情報セキュリティの考え方では、人の善意を前提にしません。人が悪いという意味ではなくて、善意に依存する仕組みは壊れやすい、というだけの話です。だから見るのは、次の3つになります。
| 見るもの | ロケットナウの場合 | 私の読み |
|---|---|---|
| 範囲:何が渡るか | 氏名・住所・電話番号。置き配なら玄関の写真も | 配達に必要な範囲としては理解できる |
| 期間:いつまで見えるか | 住所は完了後20分、マスク化で最長6か月。電話番号は記載なし | 住所は明記していて誠実。電話番号の空白が惜しい |
| 経路:誰を経由するか | 事業者から、代理店等を挟んで配達員へ。国外移転もあり | 段が増えるほど監督は届きにくくなる |
この3つで見ると、「怖い/怖くない」ではなく「どこまでなら許容できるか」に問いが変わります。そこまで来れば、あとは自分で決められるはずです。
私自身の評価を正直に書くと、住所の20分を明記している点は、むしろ好印象でした。書かない選択もできたところを書いている。ただし、これは開示の姿勢に対する評価です。安全だと言っているわけではありません。書いてある期間が守られているかどうかは、利用者には確かめられません。
一方で電話番号の扱いは、同じ文書の中で明らかに粒度が落ちています。ここは今後の改訂で埋めてほしい部分です。
なお、この記事は特定の事業者を勧めるものでも、避けるよう促すものでもありません。判断の材料を並べるところまでが役割だと考えています。
判断の分かれ道
使う・使わないの二択にする必要はないと思っています。条件で分かれます。
| あなたの状況 | 向いている使い方 | 理由 |
|---|---|---|
| 自宅の住所を知られること自体が困る | 受け取り場所そのものを見直す | 住所は配達に不可欠で、範囲を狭められない |
| 対面が苦手で置き配にしたい | 玄関周りに個人が特定できるものを置かない | 配達確認写真に写り込む、と明記されている |
| 電話がかかってくるのが気になる | 注文時の指示欄を具体的に書き、電話の必要をなくす | 電話番号のアクセス期間が書かれていない |
| 国外にデータが出るのを避けたい | このサービスは条件に合わない | 登録時点で国外移転に同意した扱いになる |
| 位置情報の常時取得が気になる | OSの権限を「使用中のみ」にする | アプリを開いている間のGPS取得が明記されている |
他のフードデリバリーでも使える読み方
ここが、この記事でいちばん持ち帰ってほしい部分です。個社の話ではなく、手順の話だからです。
どのサービスでも、公式のプライバシー通知を開いて、次の順に見れば同じ判断ができます。
- 利用目的の表を探す。データ項目ごとに目的が並んでいる表があれば、そこがいちばん具体的です
- 住所の行を読む。配達員のアクセス期間が書いてあるか。書いていなければ、その事業者は期間を公表していないということです
- 電話番号の行を読む。匿名化や転送番号の記載があるか
- 「国際的移転」の見出しを探す。移転先の国名が挙がっているか
- 配達パートナー向けの通知も開く。代理店や再委託の存在は、たいてい顧客向けではなくこちらに書かれています
5つ目は、正直あまり知られていない気がします。顧客向けの通知だけを読んでも、誰に渡るのかは分かりません。
しろまとめ
- 「安全性」は、決済・アプリ・配達員という3つの別々の不安に割れている。検索結果が答えているのは前の2つで、実際に検索1位が聞いているのは3つ目
- ロケットナウの顧客向けプライバシー通知には、住所が配達完了後最長20分間まで配達パートナーからアクセスできると明記されている
- マスク化された住所は、ライダーアプリに最長6か月間保存されることがある
- 氏名も配達員に渡る。置き配を選ぶと、玄関や部屋番号が写り込みうる確認写真が残る
- 個別の同意なしに情報が渡るのは、法第27条第5項第1号により委託に伴う提供が第三者提供に当たらないため。かわりに法第25条で委託先の監督義務がかかる
- 電話番号については、住所のようなアクセス期間の記載が見当たらなかった。匿名化の記述も確認できていない
- 配達員が代理店等と契約している場合があり、情報が動く段が1つ増える
- 個人情報は韓国・米国・台湾・シンガポール・インドを含む国外へ移転されることがあり、登録を進めた時点で同意した扱いになる
- 判断は「怖いかどうか」ではなく、範囲・期間・経路の3点で見ると自分で決められる
- 同じ読み方は、他のフードデリバリーのプライバシー通知にもそのまま使える
引っかかった点
「マスク化された住所」が具体的に何を伏せるのか、最後まで分かりませんでした。番地を消すのか、建物名だけ残すのかで、6か月という期間の意味はかなり変わります。ここは公式文書に定義がなく、私の側でも確認できていません。
もう1つ、「最長20分間」の数え方です。配達完了の判定がアプリ側のどの操作を指すのか、明記されていませんでした。置き配で写真を撮った時点なのか、その後の何かなのか。細かい話に見えますが、期間を数字で書くなら起点も要るはずだと感じました。
参考にした一次資料
- ロケットナウ 顧客向けプライバシー通知(発効日2025年1月6日/最終更新日2026年4月22日)
- ロケットナウ 配達パートナー向けプライバシー通知
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(平成28年11月策定/令和8年6月14日 最終改正)
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A
本記事の内容は2026年8月29日時点で確認したものです。事業者の通知は改訂されることがあります。実際に利用する前に、最新の内容をご自身でご確認ください。
