SCS★3の適合基準と確認の読み方|統治・取引先の12件をシートの4つの型で読む

【PR】当ページのリンクには広告が含まれています。
SCS専門家の資料を全部読む第10回のアイキャッチ。「統治・取引先」の見出しと、12件を4つの型で読む、「業務開始前に」は適合基準にない、の文字。右に決める6は文書名、伝える3は方法、点検2は日付、把握1は仕組みの内容の一覧。

連載「SCS専門家の資料を全部読む」の第10回です。今回から第2部に入り、★3の評価基準81件を別紙で全件読んでいきます。

第2部で見るのは、判定と確認です。各基準が何を求めているかは、★3連載の第2回で読みました。意味の言い換えはそちらに任せて、ここでは適合基準とシートの行を追います。

12件をシートの形に並べ直すと、語尾の型と質問の型がきれいに対応していました。その一方で、評価基準にある「業務開始前に」が適合基準には見当たりません。利用規約しかないクラウドに2-1-2-1をどう当てるかも、確かめた範囲では書かれていませんでした。後半では、食品卸の架空のN社のシートを確認者の目で読みます。

この記事でわかること
  • 12件は語尾で4つの型に分かれ、型ごとにシートに届くものが決まっている
  • 適合基準は評価基準の写しではなく、足された言葉と落ちた言葉がある
  • 用語集の「定める」「点検する」が、判定の読み方を変える
  • 資料が答えているグレーゾーンと、答えていないグレーゾーン
  • 利用規約しかないクラウドと、2-1-2-1の関係
  • 架空のN社のシートで、追加で聞くことと伝え方を考える

目次

12件は4つの型に分かれ、型ごとにシートに届くものが決まっている

先に結論です。統治・取引先の★3は12件で、語尾で分けると「決める6・伝える3・点検2・把握1」になります。★3連載の第2回で出した分け方です。シートの質問を横に並べると、型ごとに聞かれることまでそろっていました。

統治・取引先の12件の4つの型と、シートに届くもの、シートからは読めないことの対応 決める6件はシートに文書名が届き、文書の記載内容と取り決めた時期は読めない。伝える3件は説明や周知の方法が届き、届いた相手と掲載が最新かは読めない。点検2件は実施頻度と直近の実施日が届き、何を確かめてどう直したかは読めない。把握1件は仕組みの内容が届き、実際に把握した中身は読めない。★4の閲覧は、決めるの5件が文書の実在まで、2-1-2-1だけ記載内容まで、ほかの6件は原則として実施しない。 語尾の型で、シートに届くものが決まっている 型(件数) シートに届くもの シートからは読めないこと 決める 6 定める・取り決める 文書名 文書の記載内容 取り決めた時期 伝える 3 説明・参照・周知 説明・周知の方法 届いた相手 掲載が最新か 点検 2 年1回以上の頻度で 実施頻度と 直近の実施日 何を確かめて どう直したか 把握 1 仕組みを整備する 仕組みの内容 実際に把握した中身 (②の行は質問なし) ★4の閲覧:決めるの5件は文書の実在まで、2-1-2-1だけ記載内容まで ほかの6件は原則として実施しない(評価手法は最低限の方法) 型の名前は筆者の分け方。★3の確認は、原則としてシートの記載で確かめる
図1 4つの型と、シートに届くもの(各資料をもとに筆者作成)
型件数シートの質問★4の閲覧
決める(定める・取り決める)6文書名5件は文書の実在まで。2-1-2-1だけ全ての事項
伝える(説明・参照・周知)3方法原則として実施しない
点検する2実施頻度と直近の実施日原則として実施しない
把握する仕組みを整備する1仕組みの内容原則として実施しない

出典:アセスメントシート SCS-410AP(★3用。筆者が配布Excelで確認)、★4 第三者評価ガイド SCS-420 別紙をもとに筆者が整理。どちらも2026年10月29日の版です。観察は12件すべて「原則として実施しない」でした。型の名前は筆者の分け方で、資料の用語ではありません。

★3の確認は、第8回で読んだとおり、原則としてシートに記載された情報で妥当性を確かめます。確認者の手元に届くのは、文書名、方法、日付、仕組みの説明までです。12件で14行あるうち、質問のない行は1-2-1-1②と2-1-1-1②の2行でした。

意外と差が出たのは、★4の欄です。評価手法は「原則として確保すべき最低限の評価方法」なので、上限ではありません。それでも、この12件で、閲覧によって文書の記載内容まで確認する指定があるのは、2-1-2-1の1件だけでした。

決める6件:届くのは文書名

No.適合基準自己評価方法が見るもの
1-2-1-1①統括する役員と担当部署を決めている
②その役割・責任を決めている
社内規程、社内体制図、発令文書等と、記載している文書
1-2-1-2平時の連絡先リストを作成している社内体制図、連絡先一覧等と、リストの文書名
1-2-3-1役員、従業員、派遣社員及び受入出向者を対象とした守秘義務のルールを定めている就業規則、労働契約等と、ルールの文書名
1-3-1-1セキュリティ対応方針を定めている方針と、その文書名
2-1-2-1機密情報の共有先と、列挙された全ての事項を取り決めている秘密保持契約書等と、取り決めの文書名
2-1-4-1機密情報の共有先と、インシデント時の役割及び責任を定めている契約書その他の取り決めと、その文書名

出典:自己評価等ガイド SCS-410 別紙(p.20-33)をもとに筆者が要約。

用語集が効くのは、この型です。解説書の用語集は「定める」を「ルール等を文書化し、当該ルール等に基づく運用を行うこと。」と説明し、該当箇所に1-2-1-1、1-2-1-2、1-2-3-1、1-3-1-1、2-1-4-1を挙げています。1語に文書化と運用の両方が入っているわけです。

迷いやすいのは1-2-1-1でしょう。適合基準は「決めていること」で、この語だけを見ると口頭でも足りそうに読めます。ただ、評価基準は「定める」で、自己評価方法は「どのような文書に記載しているか」を確かめ、シートは文書名を聞いています。部品を重ねると、文書にあることを前提にした行だと筆者は読みました。適合基準の文だけで文書化が必須と言えるわけではない点は、断っておきます。

2-1-2-1だけは動詞が「取り決める」で、用語集の「定める」の該当箇所には入っていません。

伝える3件:届くのは方法

No.適合基準自己評価方法が見るもの
1-2-3-2入社時又は社外要員の受入れ時に、1-2-3-1で定めたルールを説明しているオリエンテーション資料、受入手順等
1-3-1-2何らかの手段・媒体により、定常的に最新の方針を参照できる社内掲示板、社内ポータルサイト等
1-3-1-3改正時に、改正内容を何らかの手段・媒体により周知している改正履歴、社内掲示板、社内ポータルサイト等

手段は「何らかの手段・媒体」で足り、別紙の冒頭も複数の手段の組み合わせを必ずしも求めていません(第9回)。シートで聞かれるのは、説明方法と周知方法です。その手段で派遣社員や受入出向者まで届いているかは、質問の文からは読めません。

点検2件:届くのは日付

1-2-1-3と2-1-1-2は、同じ形をしています。自己評価方法は「点検した記録」を確かめ、シートは実施頻度と直近の実施日を聞きます。★4の評価手法は、直近の実施日について「1年以内に実施していることを確認する」と書いていました。

用語集の「点検する」は、把握することが求められる情報に更新漏れ等の不備がないかを確かめ、必要に応じて更新することです。例には棚卸が挙がっています。日付だけでは、そこまでは読めません。

もう1つ、2件とも★4の1-4-1-1で「点検を求める対策」に名指しされています。結果を統括する役員へ報告するのは★4からで、★3の行は点検までです。

把握1件:届くのは仕組みの説明

2-1-1-1だけは適合基準が2本です。①は仕組みの整備、②はその仕組みで実際に把握していること。シートの質問は①の行の「仕組みの内容」だけで、②の行には質問がありません。第8回で読んだ「質問がない19行」の1つです。仕組みの説明はあっても、把握した中身は確認者に届かない形になっています。

対象外の条件は3種類

条件評価基準
該当なし(原則として対象外にできない)1-2-1-1〜1-2-1-3、1-2-3-1、1-2-3-2、1-3-1-1〜1-3-1-3の8件
自社以外の組織が管理・提供し、自社の資産が接続しているシステムが「存在し得ない場合」2-1-1-1、2-1-1-2
自社の機密情報を共有する子会社又は取引先が「存在しない場合」2-1-2-1、2-1-4-1

ガイドの別紙で「存在し得ない」という言い方をするのは、筆者が検索した範囲ではこの2-1-1の2件だけでした。ほかは「存在しない場合」です。今つながっていないだけでは足りず、つながることがあり得ないと言えるかを見る言葉に読めます。ただ、これは筆者の読みで、言葉を分けた理由は書かれていません。

適合基準は、評価基準の写しではない

12件の適合基準を評価基準と並べると、言葉が足されたり落ちたりしていました。変化があるのは次の7件です。

No.評価基準からの変化筆者の読み
1-2-1-1①「役員と担当部署を決めていること」が足された。CISOの例示は適合基準にない(自己評価方法②にはある)誰が担当するかを決めていることが線に入る
1-2-1-2「定める」が「作成していること」にリストという物があること
1-2-3-2「No.1-2-3-1で定めた」が足された説明するのは、定めたルール
1-3-1-2、1-3-1-3「何らかの手段・媒体により」が足された手段は問わない
2-1-1-1②「①の仕組みにより…把握していること」が足された仕組みだけでなく、実際の把握まで
2-1-2-1「全ての」が足された。「業務開始前に」がない6つの事項の全部が線。時期は後述

出典:自己評価等ガイド SCS-410 別紙をもとに筆者が比較。第9回で突き合わせた「同一である」の差13件に、この12件は入っていません。

資料が答えているところ

グレーゾーンのうち、解説書と用語集に答えがあるものを先に並べます。語尾は原文のままです。

問い資料の答え(「」は原文)No.
統括する役員は会社法上の役員か「会社法上の役員であることを必ずしも求めるものではない」。適用範囲が事業部門等なら事業部長等も「考えられる」1-2-1-1
実作業を外部に委託している委託先管理を通じて役割を果たす場合も「含む」1-2-1-1
連絡先リストに要ること網羅と、実際に機能することの「2点である」。定期的な最新化と連絡確認のルールは「望ましい」1-2-1-2
派遣社員・受入出向者のルール規程等の中に、派遣元又は出向元との契約に守秘義務を定める旨を規定することが「考えられる」1-2-3-1
方針に書く事項6つの事項を「少なくとも」規定することが「考えられる」1-3-1-1
つながっている先APIで接続する外部サービスも「含まれる」。承認を得ていない利用(シャドーIT)の把握も「重要」2-1-1-1
取り決めの形仕様書、契約書、秘密保持契約が「考えられる」。返還又は廃棄は対象・実施時期・方法を取り決めることが「考えられる」2-1-2-1
事故時の役割の中身連絡、調査、封じ込め、復旧の主体と、相手の報告・協力を定めることが「考えられる」2-1-4-1

出典:解説書 SCS-620 別紙(p.30-44)をもとに筆者が要約。

判定に効きそうなのは2つあります。

1つ目は1-2-3-1です。自己評価方法の例は就業規則、労働契約等でした。解説書は派遣社員と受入出向者を分けて書いているので、就業規則の文書名だけでは、この2者に効くルールなのかが読めません。★4の1-2-3-4は派遣元・出向元との「締結」を求める基準で、★3の解説書の例は「定める旨を規定」です。同じ相手でも深さが違います。

2つ目は1-3-1-1の語尾です。見出しの問いは「最低限どのような事項を規定する必要があるか?」で、答えは「少なくとも以下の事項を規定することが考えられる」でした。問いと答えで強さが違うので、筆者は答えの語尾で読んでいます。

資料が答えていないところ

ここからは、資料を重ねても答えが見つからなかった点です。どれも筆者の読みであり、公式の判断ではありません。

「業務開始前に」は、適合基準にない

2-1-2-1の評価基準には「業務開始前に」があります。部品ごとに見ると、次のとおりです。

部品「業務開始前に」
評価基準(SCS-400、ガイド別紙、シート、第三者評価ガイド別紙)ある
【解説】(解説書)ある
適合基準(ガイド別紙、シート、第三者評価ガイド別紙)ない
自己評価方法(ガイド別紙、シート)ない
シートの質問、★4の評価手法ない

★4だけの1-2-3-4は、適合基準にも「業務開始前に」が書かれています。書き漏らしなのか、意図して落としたのかは分かりません。適合基準は「どのようなことがなされていれば適合と判断することができるか」を示すものなので、文字どおりなら時期は線の外とも読めます。

適合基準は、評価基準の文をすべて繰り返すものではありません。筆者は、評価基準に明記された時期まで外れたとは考えず、時期も見る読みを取ります。評価基準は「要求事項を満たしていると判断するための基準」だからです。ただ、シートの文書名からは時期が読めません。確認の場面では、締結日を聞かない限り分からないことになります。

利用規約しかないクラウドと、2-1-2-1

クラウドに機密情報を置いている会社にとって、2-1-2-1はどこまでかかるのか。今回いちばん答えが出なかったのは、ここです。

相手に入る手がかりは2つあります。用語集の「取引先」はクラウドサービス提供者を含み、該当箇所に2-1-2-1を挙げています。解説書の3-1-3-1の解説にも、次の文があります。機密情報の取扱いに関する要件は「評価基準 2-1-2-1 において、情報共有先となるサービス事業者との間で明確化する」。

ところが、多くのクラウドは利用規約で提供されています。3-1-3-2には、そのための道がありました。ガイドの適合基準には、契約等で合意を取り交わすことが困難な場合は、公開情報や説明書等で機密情報の取扱いを確認する、という一文があります。解説書も、個々に合意文書を取り交わせない場合は利用規約等に沿ってリスクを確認することが考えられる、としています。なお、この一文は第三者評価ガイドの3-1-3-2にはありません(第9回)。

2-1-2-1の適合基準に、同じ一文はありません。「全ての事項を取り決めていること」のままです。3-1-3-2は外部情報サービスの管理に関する別の評価基準で、その方法を2-1-2-1にも適用できるとする記載は、確かめた範囲では見当たりません。読み方は3通り考えられます。

読みすると引っかかる点
A 利用規約への同意も「取り決め」に入れる6つの事項が規約で読めることが要る規約に全部あるとは限らない
B 3-1-3-2の一文を2-1-2-1にも読み足す公開情報等での確認で足りる2-1-2-1の文に書かれていない
C 個別に取り決められない相手は2-1-2-1の外3-1-3-2だけで扱う3-1-3-1の解説の文と合いにくい

3通りのどれかだと書いた資料も、見つかっていません。正直、筆者にもどれが正しいかは言えませんが、いまはAに近い読みをしています。6つの事項のうち規約で読めるものと読めないものを分け、読めない事項をどう考えたかを説明できるようにしておくと、話が早そうです。これは筆者の勧めで、資料が定めた手順ではありません。

「最新の」は、自己評価方法に出てこない

1-3-1-2の評価基準と適合基準には「最新の」があります。ところが自己評価方法は「No.1-3-1-1で策定したセキュリティ対応方針」を定常的に参照できる状態か、と書いていて、「最新」の語がありません。シートの質問も周知方法です。

第9回の4-1-6-2は、適合基準にない言葉が自己評価方法にありました。ここは逆で、適合基準にある言葉が自己評価方法にない形です。適合基準にある以上、線の内側だと筆者は読みます。例示の手順をなぞるだけでは届かないかもしれない点に、気をつけたいところです。

方針を改正したことがない会社の1-3-1-3

適合基準は「改正時に…周知していること」で、シートの質問は「改正した際の周知方法」です。一度も改正していない会社がどう答えるかは、書かれていません。

対象外の条件は「該当なし」なので、原則として対象外にはできません。例外は、IT基盤の状況等に鑑みて確認責任者が妥当と判断し、理由を記録した場合です(第9回)。改正の実績がないことが、この「状況等」に当たるかは読み取れません。適合として改正時の周知の決まりを書く形も考えられますが、どちらが想定されているのかは分かりませんでした。

そのほかに書かれていないこと

  • 1-2-3-2の「入社時又は社外要員の受入れ時」の「又は」。どちらか一方でよいのか、場面を並べたものか。1-2-3-1が派遣社員・受入出向者を対象に含むことから、筆者は場面を並べたものと読んでいます
  • 担当部署を置けるだけの人がいない会社。解説書は組織の実態に応じた割当てと、小規模組織向けの手引きを案内しています。担当者1人を「部署」と書けるかまでは書かれていません
  • 取得単位が企業グループのとき、範囲の内側の子会社が「自社以外の組織」や「子会社又は取引先」に入るか。企業グループ単位の取得そのものはガイド第2章が想定していますが、「自社」の定義は、確かめた範囲では見当たりません
  • 「自社の機密情報」に、顧客から預かった情報が入るか。★3連載の第2回で残した点で、今回も答えは見つかりませんでした
  • 2-1-2-1の取り決めを、共有先の全部について確かめるのか、抜き取りでよいのか。★4の2-1-1-3の解説にある「必ずしもすべての取引先を対象とする必要はなく」は、対象を機密情報の共有先に絞るという別の基準の話で、抜き取りの話ではないと筆者は読みました

事例:N社のシートを読む(架空)

ここからは架空の場面です。筆者が作った演習で、研修の問題とは関係ありません。★3連載の第2回の模擬ケースはシートの公開前に作ったものなので、今回は実物のシートの形で読みます。

状況(架空)

N社は、地域の食品卸です。従業員は約80名で、取得単位は法人、適用範囲は法人全体とします。取引先のスーパーから★3の登録を求められました。

  • 受注は、スーパーが運営するWeb受発注システムで受ける
  • 会計と在庫はクラウドサービスを、利用規約に同意して使っている
  • 倉庫に派遣社員が約10名いる
  • 販促チラシの制作を外注先1社に出し、仕入価格を含む販促計画を渡している
  • 総務の2名がセキュリティ担当を兼ねている
  • 確認責任者がシートを読むのは2027年5月

結果の欄は、次の行すべて「適合」です。

No.質問(要約)N社の回答
1-2-1-1①役割・責任を定めた文書の文書名組織図(2025年4月版)
1-2-1-3平時の体制の点検の実施頻度、直近の実施日年1回/2027年4月1日
1-2-3-1派遣社員等も対象とした守秘義務のルールの文書名就業規則
1-3-1-2方針の周知方法社内ポータルに掲載
1-3-1-3方針を改正した際の周知方法改正の実績なし
2-1-1-1①接続しているシステムを把握する仕組みの内容クラウドサービスの契約一覧で管理
2-1-1-2点検の実施頻度、直近の実施日年1回/2026年4月1日
2-1-2-1機密情報の取り決めの文書名外注先との秘密保持契約書、クラウドサービスの利用規約
2-1-4-1役割及び責任を定めた文書の文書名外注先との秘密保持契約書

読み方

第8回の4つの観点に、「基準に届いているか」を足して読みます。観点への振り分けは筆者の当てはめです。

観点行読み
網羅性1-2-3-1問いは派遣社員等も対象のルール。就業規則という文書名からは、倉庫の派遣社員に効くのかが読めない
網羅性1-3-1-2対象には派遣社員も入る。倉庫の派遣社員がポータルを見られるか、掲載が最新かが読めない
正確性1-2-1-1①問いは役割・責任を定めた文書。組織図に役割・責任まで書かれているかが読めない
正確性2-1-1-1①相手には顧客も含まれる。クラウドの契約一覧に、スーパーのWeb受発注が入っているかが読めない
適時性2-1-1-2直近の点検が確認時点から1年以上前。頻度は年1回と答えている
一貫性1-2-1-1①と1-2-1-3体制は先月点検したのに、文書は2年前の版。変更がなかったのか、更新されていないのかが読めない
一貫性2-1-2-1と2-1-4-12-1-2-1はクラウドも相手に挙げ、2-1-4-1は外注先だけ。相手の範囲がそろっていない
基準に届いているか2-1-2-1適合基準は全ての事項。文書名からは読めない。利用規約での読みは資料に答えがない
基準に届いているか1-3-1-3回答は実績なしで、結果は適合。どう扱うかは資料に答えがない

追加で聞くことと、伝え方

行追加で聞くこと
1-2-1-1①、1-2-1-3役割・責任が書かれている文書と箇所。点検の結果、文書を更新する必要がなかったのか
1-2-3-1派遣社員に効くルールが、どの文書のどこにあるか
1-3-1-2倉庫の派遣社員が方針を見る手段。掲載された版が最新だと、どう確かめているか
1-3-1-3「実績なし」の趣旨。改正するときの周知の決まりがあるか
2-1-1-1①、2-1-1-2契約一覧の範囲に、顧客のシステムが入っているか。2026年4月より後の点検の有無
2-1-2-1、2-1-4-16つの事項が、それぞれ契約書と規約のどこで読めるか。外注先と結んだ時期。クラウド事業者との役割をどう考えたか

伝え方については、研修実施基準の附属書B(研修の科目及び履修内容の例)が、研修の達成目標の中で線を示しています。改善に向けた助言はできても、具体的なセキュリティ対策の設計・実装を代行又は指示してはならない、というものです。たとえば2-1-2-1なら、「規約のどこで6つの事項を確かめましたか」は聞けます。「この文面で覚書を結んでください」は、指示に近づくと筆者は考えています。

日付の行は、読み方に迷いません。N社が点検して回答を更新すれば、解消しそうです。迷うのは2-1-2-1と1-3-1-3で、資料に答えがない以上、確認者が根拠を説明できる形で判断することになりそうです。助言してもなお妥当性を確認できない事項があれば署名しない、というのがガイド4.1の線でした。どう直すかは、N社が決めることです。

筆者の立場から:「定める」の一語と、ISOの書き分け

ISMS連載の第11回では、7.5.1が挙げる文書には2種類あると書きました。各条項が「文書化した情報として」と名指しするものと、ISMSの有効性のために組織が必要と決めたものです。方針(5.2)は名指しされる側でした。第6回で読んだ役割の割り当て(5.3)が求めていたのは、割り当てとその伝達です。

SCSの評価基準は、少なくとも今回の12件では同じ語を使っています。体制(1-2-1-1)、方針(1-3-1-1)、相手との分担(2-1-4-1)のどれも「定める」です。用語集の説明では、その中に文書化も運用も入っています。ISOの書き分けを1語に畳んでいるように見えました。

短くて読みやすい反面、用語集まで見に行かないと、文書が要るのかどうかが基準の文からは読めません。適合基準が「決めていること」に変わる1-2-1-1のような行では、なおさらです。この12件を読んだ限りでは、ISOは条項ごとに書いてある分、長いけれど迷いにくい。SCSは短いけれど、読む資料が増えます。どちらが良いという話ではなく、読み方の違いとして受け取りました。

筆者には、監査を受けた経験も、した経験もありません。ここに書いたのは、2つの制度の資料を読み比べた感想です。

注意点

「閲覧しない」は、見なくてよいという意味ではない

★4の評価手法は最低限の方法です。★3の確認も、不自然な記載等があれば追加説明を求めることが望ましい、とされています(第8回)。この記事の「シートに届くもの」は、資料が最低限として書いている範囲の話です。

文書名しか届かないことと、文書が要らないことは別

確認者に届くのが文書名でも、組織は自己評価方法を参考に中身を確かめる立場にあります。シートの情報の真実性は、登録希望組織が責任を負います(第8回)。

答えがない点の読みは、筆者のものです

「業務開始前に」と利用規約の読みは、資料が示した答えではありません。実際の判断は、確認責任者や評価機関、制度運営機関の見解で変わる可能性があります。

まとめ

  • 統治・取引先の★3 12件は、決める6・伝える3・点検2・把握1に分かれ、シートの質問は文書名・方法・日付・仕組みの内容に対応する
  • ★4の評価手法で、閲覧によって文書の記載内容まで確認する指定があるのは、この12件では2-1-2-1だけ。ただし評価手法は最低限の方法で、上限ではない
  • 適合基準は評価基準の写しではなく、7件で言葉が足されたり変わったりしている
  • 用語集は「定める」を文書化と運用の両方として説明し、この12件では5件が該当箇所に挙がる。「点検する」は不備の確認と必要に応じた更新を含む
  • 2-1-1の対象外の条件だけ「存在し得ない場合」と書かれている
  • 2-1-2-1の「業務開始前に」は、適合基準・自己評価方法・シートの質問・★4の評価手法にない。筆者は時期も見る読みを取るが、資料が示した答えではない
  • 3-1-3-2には利用規約等で確かめる道があるが、その方法を2-1-2-1の適合判定にも適用できるかは、確かめた範囲では明示されていない
  • シートで届かない部分は、追加で聞くことを整理して伝える。研修の達成目標は、具体的な対策の設計・実装を代行又は指示しない線を置いている

次回は第11回、識別の分類の11件を読みます。

引っかかった点

  • 2-1-2-1の「業務開始前に」が適合基準にない一方で、★4の1-2-3-4の適合基準には同じ言葉があること
  • 3-1-3-2にある「合意が困難な場合」の一文が、2-1-2-1にないこと
  • 1-3-1-2の「最新の」が、自己評価方法に出てこないこと
  • 一度も方針を改正していない会社が、1-3-1-3にどう答えるのか
  • 1-2-1-1の適合基準が「決めていること」で、用語集の「定める」と違う語になっていること

参考にした一次資料

  • IPA「★3・★4 要求事項・評価基準」(要求事項・評価基準 SCS-400 Ver.1.1、自己評価等ガイド SCS-410 v1.0 の別紙の冒頭・別紙1-2-1〜2-1-4・3-1-3-2、アセスメントシート SCS-410AP、★4 第三者評価ガイド SCS-420 v1.0 の別紙。どれも2026年10月29日の軽微な修正版)
  • 同じページの解説書 SCS-620 v1.0(2026年10月28日)の別紙1-2-1〜2-1-4・3-1-3、付録1 用語集
  • IPA「SCS評価制度 制度規程・委員会」(研修実施基準 SCS-330B の附属書B。2026年11月2日の再公開版)

この記事は2026年11月8日時点で確認した内容です。要求事項・評価基準のページの最終更新日は2026年10月29日、制度規程のページは2026年11月2日でした。制度は詳細化が進んでいる段階で、資料が修正される可能性があります。判断の前に、必ず一次資料で最新の状態を確認してください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次