「Twitterが帰ってきた」というニュースが、8月27日に一気に広まりました。
タイムラインを見ていると、懐かしさで盛り上がっている人がけっこういます。あの青い鳥が戻ってくるなら、と反応したくなる気持ちは分かります。筆者も一瞬「おっ」と思いました。
ただ、落ち着いて調べると、事実はニュースの見出しとかなり違いました。
そして、日本語の記事はどれも「新しいSNSが出た」で止まっています。利用規約とプライバシーポリシーの中身に触れたものが、少なくとも筆者が探した範囲では見つかりませんでした。そこで、実際に原文を読んでみました。
結論から言うと、20ドル払う前に知っておいたほうがいいことが、いくつかあります。
まもる
しろ- 「Twitterが帰ってきた」という話の、正確な中身
- Twitter.now を運営しているのが誰で、Xとどういう関係にあるか
- 利用規約に書かれている返金・保証・裁判管轄の条件
- プライバシーポリシーで、何が集められると書かれているか
- 20ドルよりも先に気をつけるべき、パスワードの話
- 登録するかどうかを自分で判定するためのチェック項目
結論:旧Twitterは復活していません
先に答えを書きます。Twitter.now は、かつての Twitter が戻ってきたものではありません。
運営しているのは Operation Bluebird, Inc. という、米バージニア州のスタートアップです。X Corp. とは資本関係も運営上の関係もありません。公式サイトにも「Not affiliated with X Corp.(X社とは無関係)」とはっきり書かれています。
つまり、あなたの旧Twitterアカウントも、フォロワーも、過去のツイートも、ここには戻ってきません。まったく別の、生まれたばかりのSNSです。
ここを取り違えたまま登録に進むと、後で説明する一番危ない事故につながります。
「Twitterが帰ってきた」には2つの意味がある
ニュースの見出しが分かりにくいのは、この一言に2つの意味が混ざっているからです。整理しておきます。
意味A:旧Twitterのサービスが復活した
これは誤りです。X は今も X として動いています。名前が Twitter に戻ったわけでもありません。
意味B:「Twitter」という名前を、別の会社が使い始めた
こちらが実態です。
Operation Bluebird を立ち上げたのは、スティーブン・コーツ氏。旧Twitter で商標を担当していた弁護士です。2023年に Twitter が X へブランド変更した時点で「Twitter という商標は放棄された」という立場を取っています。
そして2025年12月2日、米国特許商標庁に商標登録の取消を申し立てました。同月16日には X社が提訴し、係争になっています。
2026年4月の審理では、連邦地裁のコルム・コノリー判事が暫定的な見解を示しました。「X社は Tweet という語と鳥のロゴ、おそらく Twitter という語についても知的財産権を放棄したと思われる」という内容です。
ただし正式な書面命令は出ていません。つまり、まだ決着していません。この点は後で効いてきます。
Twitter.now はどんなサービスなのか
2026年8月24日(現地時間)に開始した、有料制のSNSです。8月27日時点で確認できた内容をまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 運営 | Operation Bluebird, Inc.(米バージニア州) |
| 開始日 | 2026年8月24日(現地時間) |
| Founder | 20ドル。早期アクセス、ハンドル確保、参加番号入りバッジ |
| Fighter | 40ドル以上。上記に加え、運営資金の支援と追加バッジ |
| 言語 | 英語のみ。日本語対応なし |
| Xとの関係 | 無関係と公式に明記 |
特徴として掲げているのが「VERA」という構想です。各投稿に信頼度スコアを付け、利用者が「どのくらい怪しい投稿までフィードに流すか」を自分で調整できる、という仕組みだと説明されています。スコアの低い投稿も凍結や削除はせず、拡散だけを抑える方針だそうです。
考え方としては面白いと思います。ただ、これはまだ構想段階のものです。実装されて機能するかどうかは、今の時点では分かりません。
規約を読んで分かった、5つの条件
ここからが本題です。公式サイトの利用規約とプライバシーポリシーを読みました。個人が20ドル払うかどうかを判断するうえで、無視できない条項がいくつかありました。
返金は効きません
利用規約に、こう書かれています。
all purchases are final and non-refundable once the applicable early access, feature, service, or digital product has been made available to you
早期アクセスや機能が提供された時点で、すべての購入は最終確定であり返金されない、という意味です。
さらに、アカウントが停止・終了された場合についても「返金、クレジット、代替、その他の補償を受ける権利はない」と明記されています。そしてアカウント停止の条件は「当社の単独の裁量で」「その他いかなる理由でも」となっており、事前通知の義務もありません。
払ったお金が戻る前提では考えないほうがよさそうです。
サービスが続く保証はありません
規約には大文字でこう書かれています。
THE SERVICE IS PROVIDED “AS IS,” WITHOUT WARRANTY OF ANY KIND
現状有姿での提供であり、いかなる保証もしない。加えて「サービスが要件を満たすこと、中断なく安全にエラーなく利用できることを保証しない」とも書かれています。
この種の免責はソフトウェアの規約ではよく見る表現で、これ自体が特別におかしいわけではありません。ただ、開始から数日のサービスに前払いする、という文脈では意味が変わってきます。
前述の通り、商標をめぐる係争はまだ決着していません。仮に結果が不利に転んだ場合、このサービスが「Twitter」を名乗り続けられるかどうかも確定していない、ということになります。
争うならデラウェア州です
準拠法は連邦仲裁法とデラウェア州法。裁判管轄はデラウェア州ウィルミントンの州裁判所および連邦裁判所と定められています。
正直、ここが一番現実的な問題だと感じました。日本から20ドルの件で争うのは、費用の面でまず割に合いません。責任の上限も「支払った金額、または100ドルのいずれか」と規定されています。
つまり、トラブルが起きても取り返す手段は事実上ない、と考えておくべきです。
規約もポリシーも英語だけです
日本語対応はありません。サイトも規約もプライバシーポリシーも、すべて英語です。
これは意外と大きな問題だと思っています。ここまで書いてきた条項は、どれも英文を読まないと分からないものばかりでした。「Twitterが帰ってきた」という日本語のニュースだけを見て登録する人は、これらを知らないままカード情報を入力することになります。
投稿がAI開発に使われる可能性があります
プライバシーポリシー(有効日2026年8月19日)を読むと、収集する情報として次のものが挙げられています。氏名、ユーザー名、メールアドレス、パスワード、プロフィール、投稿したコンテンツ、利用状況、そしてAIによる推論・推奨情報です。
第三者への提供先として「サービスプロバイダー」が挙がっており、その用途にAI・機械学習の開発が含まれると読める記述があります。
あわせて気になった点も挙げておきます。データの保存場所(国)の記載がありません。Cookieやトラッキングについての項目も見当たりませんでした。決済情報をどう扱うかの記載も、確認できた範囲では見つかりませんでした。
カリフォルニア州のプライバシー法(CCPA)への対応セクションはあります。一方でGDPRへの直接の言及はなく、日本の個人情報保護法への言及もありませんでした。
一番危ないのは、20ドルではありません
ここまでお金の話をしてきましたが、筆者が最も心配しているのは別のところです。
パスワードです。
「Twitterが帰ってきた」と思って登録に進む人は、どうなるでしょうか。おそらく、かつて使っていたのと同じユーザー名を入れます。そして、同じパスワードを入れます。懐かしいサービスに戻ってきた感覚なので、それが自然な流れになってしまいます。
でも、これはまったくの別サービスです。運営元も、サーバーも、セキュリティ体制も違います。
同じIDとパスワードの組み合わせを複数のサービスで使い回していると、どこか一箇所から漏れた時点で、他のサービスにも次々と試されます。攻撃者は流出した組み合わせを機械的に打ち込むので、使い回している数だけ被害が広がる構造です。
しかも今回は、旧Twitter を強く連想させる名前とデザインになっています。使い回しが誘発されやすい条件がそろっている、と言えます。
りん
しろもし登録するなら、そのサービス専用のパスワードを新しく作ってください。これは20ドルを払うかどうかより先に決めるべきことだと思います。
とはいえ、サービスごとに違うパスワードを作ると、今度は管理そのものが負担になります。その話は別の記事で整理しました。

「.now」という見慣れないドメインについて
もうひとつ、注意しておきたいことがあります。
このサービスのURLは twitter.now です。.com でも .jp でもない、あまり見かけない末尾になっています。
これ自体が悪いわけではありません。問題は「一般の利用者に、本物かどうかを見分ける手がかりが少ない」ことです。
知名度の高い名前が動いた直後は、それに便乗した紛らわしいドメインが立ちやすくなります。大手企業のキャンペーンや新サービスの発表に合わせて偽サイトが作られる例は、これまでも繰り返し起きてきました。今回のように「見慣れないドメインのほうが正解」という状況は、偽物を作る側にとって都合のいい条件がそろっています。
twitter-now.com や twitternow.jp のような、それらしい別のドメインが出てきたとしても、多くの人は判断できないと思います。
対策はシンプルです。ニュース記事やSNSの投稿に貼られたリンクから飛ぶのではなく、公式が案内しているURLを自分で確認してから開く。そしてカード情報を入れる画面では、アドレスバーのドメインをもう一度読む。この2つだけでも、だいぶ違います。
偽サイトの見分け方そのものは、実例を使って別記事にまとめてあります。手口の形はどのブランドでも共通なので、そちらもあわせてどうぞ。

筆者の見方:英文の規約を読んでから判断する、ということ
筆者は自治体の情報システム部門で、20年以上インフラの運用に関わってきました。
その中で何度もやってきたのが、新しいサービスを業務で使っていいかどうかの判断です。手順はいつも同じで、まず英語の利用規約とプライバシーポリシーを開きます。見るポイントも決まっています。データがどこに置かれるか。第三者に渡るか。契約が終わったらどうなるか。揉めたときにどこの法律で裁かれるか。
この作業を続けていると、あることに気づきます。多くのサービスは、規約を読んだ瞬間に評価が変わります。宣伝文句がどれだけ魅力的でも、条項は淡々と会社側の都合で書かれているからです。
今回、同じ手順を Twitter.now に当てはめてみました。率直に言うと、業務利用なら見送る条件が並んでいた、という感想です。データの保存場所が書かれていない。返金がない。管轄が遠い。この3つがそろうと、組織としては通せません。
もちろん、個人が趣味で20ドル払うのと、組織が業務で導入するのとでは基準が違います。個人なら「面白そうだから乗ってみる」も立派な判断です。そこを否定するつもりはありません。
ただ、判断の材料そのものは同じでいいはずだと思っています。宣伝ではなく条項を見る。この習慣は、個人がサービスを選ぶときにもそのまま使えます。
登録する前の自己判定
以下に当てはまる数が多いほど、今は見送ったほうが納得しやすいと思います。
| チェック項目 | 当てはまる場合 |
|---|---|
| 旧Twitterのアカウントが戻ると思っていた | 前提が違うので、まず情報を確認 |
| 英語の利用規約を自分で読んでいない | 返金・管轄の条件を知らずに払うことになる |
| 20ドルが戻らなくても困らない、とは言い切れない | 返金条項がないため、戻らない前提が必要 |
| 他のサービスと同じパスワードを使うつもりだった | ここだけは先に変えたほうがいい |
| ニュースやSNSのリンクから登録画面へ飛んだ | ドメインを自分で確認してから進む |
| 日本語で使えると思っていた | 現時点では英語のみ |
逆に、英文の規約を読んだうえで「名前をめぐる争いを応援したい」「昔のハンドルを押さえておきたい」と考えるなら、それは筋の通った判断だと思います。金額も、失って致命傷になる額ではありません。
筆者自身は、今は様子を見ます。商標の件が決着していないこと、そしてサービスが始まって数日しか経っていないことが理由です。急いで決めないといけない話ではありません。
まとめ
- Twitter.now は旧Twitterの復活ではなく、別会社(Operation Bluebird, Inc.)の新しいSNS
- 公式サイトにも「X社とは無関係」と明記されている
- 商標をめぐる係争は継続中で、まだ決着していない
- 利用規約では、購入は返金不可。アカウント停止時も補償なしと書かれている
- サービスは現状有姿での提供で、継続や安定の保証はない
- 裁判管轄はデラウェア州。日本から争うのは現実的でない
- 規約とプライバシーポリシーは英語のみ
- 20ドルより先に決めるべきは、そのサービス専用のパスワードを使うこと
- 見慣れないドメインなので、便乗する偽サイトに注意する
情報は2026年8月27日時点で確認したものです。開始直後のサービスなので、料金や規約は今後変わる可能性があります。登録を検討するときは、必ず公式の最新版を自分で確認してください。
引っかかった点
正直に書いておくと、調べきれなかったことが3つあります。
ひとつは、決済をどの事業者が処理しているかです。公式サイトにも規約にも、決済代行の名前を見つけられませんでした。カード情報がどこに渡るのかが分からないのは、個人的にはかなり気になっています。
もうひとつは、日本から登録できるのか、通貨がどう表示されるのかです。実際に登録手続きを進めていないため、確認できていません。
最後に、.now というドメインをどこが管理しているのかも特定できませんでした。ここが分かると、ドメインの信頼性をもう一段階まで評価できたはずです。
参考にした一次資料
- Twitter.now 公式サイト(https://twitter.now/)
- Twitter.now 利用規約(https://twitter.now/terms-of-service/)
- Twitter.now プライバシーポリシー(https://twitter.now/privacy/)有効日2026年8月19日
- ITmedia NEWS「『Twitter』が帰ってきた? 元Twitter法務のスタートアップが新SNS立ち上げ Xとは係争中」2026年8月27日
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