exaBase AI(旧 exaBase 生成AI)を自治体で導入するには|『LGWANだから無理』を覆した5ステップと料金の実際

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LGWAN環境の自治体でexaBase生成AIを導入する方法を解説する記事のアイキャッチ。閉域網から外部AIへ経路が通る図と導入5ステップ・料金を示すキャッチコピー

自治体の情報政策担当の方と話していると、「セキュリティが心配で、うちはまだ様子見です」という一言をよく聞きます。

使いたい気持ちはある。ただ、庁内で説明できる材料がない。それで話が止まってしまうんですよね。

無理もない話です。目の前の端末はインターネットにつながっていませんし、「入力した情報はどこへ行くのか」と聞かれたとき、はっきり答えられる資料は意外と手元にありません。

上司からは「他所はどうしてる?」と聞かれる。ベンダーの資料は専門用語ばかり。判断の材料が揃わないまま、また一年が過ぎていく。

そんな状況にいる方は少なくないはずです。

この記事では、LGWAN環境で生成AIが使えない仕組み上の理由を整理したうえで、exaBase 生成AIを自治体で導入する際の判断材料をお伝えします。

なお本サービスは2026年7月1日より「exaBase AI」(自治体向けは「exaBase AI for 自治体」)へ名称変更されています。本記事では検索のしやすさを考えて、旧称の「exaBase 生成AI」で表記を統一しています。

得意なこと、正直まだ任せられないこと。導入の手順と、月額料金の目安。それから、庁内ルールをどこから書き始めればいいか。

読み終えたときに、「うちの場合はこう進める」と自分の言葉で説明できる。そこを目指して書きました。

この記事でわかること
  • LGWANで生成AIが使えない仕組みがわかる
  • exaBaseの得意・不得意が具体的にわかる
  • 導入の手順と月額料金の目安がわかる
  • 庁内ルールをどう書き始めるかがわかる
この記事を書いた人
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しろ 🐶

官公庁のセキュリティ実務10年以上 / 情報処理安全確保支援士試験 合格

日常に潜む「ネットの怖さや詐欺」を見抜く方法を、元プログラマー・SEの知見を活かして専門用語なしでやさしく解説します。

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目次

LGWANで生成AIを使えない本当の理由

ポイント
  • 自治体のAI導入でつまずく3つの壁
  • 三層分離が生む「使えない」の正体
  • ChatGPTなど一般AIツールとの違い
  • 個人情報と誤回答に潜むリスク
  • 見落としがちな権限管理の落とし穴

自治体のAI導入でつまずく3つの壁

自治体でAIが広がらないのは、やる気の問題ではありません。 壁は大きく3つ。ネットワーク、庁内ルール、そして人です。

まずは数字から見てみますね。総務省の最新調査によると、令和7年10月末時点で生成AIを導入済みの団体は、都道府県・指定都市ともに100%。ところが、その他の市区町村は45.6%にとどまっています(総務省「自治体における生成AI導入状況(令和7年度)」)。

同じ「自治体」なのに、導入率には2倍以上の開きがあります。
前年度(都道府県87.2%/指定都市90.0%/その他市区町村29.9%)から差は縮まりましたが、いまだ半数以上の市区町村が導入に至っていません。

個人的には、この差にこそ問題の本質が表れていると感じます。人口規模でも予算規模でもなく、環境と体制の差なんですよね。

自治体の生成AI導入を阻む3つの壁を示す図。ネットワーク・ルール・人の壁を並べ、生成AI導入率が都道府県100%に対し市区町村45.6%であることを併記

1つ目は、ネットワークの壁です。多くの職員さんが日中さわっている端末は、インターネットとつながっていません。クラウド上のAIに、そもそも手が届かないのです。

2つ目は、ルールの壁。何を入力してよくて、何がダメなのか。その線引きが決まっていないと、現場は怖くて踏み出せません。

総務省も2025年12月に「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<導入手順編>」を第4版へ改訂し、「生成AIシステム利用ガイドライン」のひな形を示しています(総務省)。ゼロから考えなくてよくなったのは、小規模団体にとって大きな追い風です。

3つ目は、人の壁です。「使ってみたいけれど、失敗したら怖い」。この気持ち、痛いほど分かります。

小規模な団体ほど、情報政策の担当が一人しかいないケースも珍しくありません。誰かに相談したくても、庁内に詳しい人がいない。孤独な戦いになりがちです。

たとえば月曜の朝。窓口が開く前の30分で、先週の会議録をまとめたい職員さんがいたとします。

使いたい気持ちはあるのに、目の前の端末では検索すらできない。しかたなく、キーボードを叩き続ける——。この「あと一歩が届かない」もどかしさが、導入率の差になって表れています。

壁は3つ。ネットワーク・ルール・人のどれが自庁のボトルネックかを見極めることが、最初の一歩になります。

では、いちばん根っこにあるネットワークの壁。これはいったい何者なのでしょうか。

三層分離が生む「使えない」の正体

LGWANで生成AIが使えない最大の理由は、「三層の対策」という設計思想にあります。 安全のために、ネットワークをあえて切り離しているのです。

背景をお話ししますね。2015年の日本年金機構における大規模な情報流出をきっかけに、総務省は同年11月、自治体のネットワークを3つに分ける方針を打ち出しました(総務省「新たな自治体情報セキュリティ対策の抜本的強化に向けて」、および「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」)。

自治体ネットワークの三層分離を示す構造図。マイナンバー利用事務系とLGWAN接続系は外部クラウドの生成AIに接続できず、インターネット接続系のみ接続可能なことを表す

3つの層を整理すると、こんなイメージです。

層の名前主な用途インターネット接続
個人番号(マイナンバー)利用事務系住民記録・税・社会保障原則遮断(最も厳格)
LGWAN接続系財務・人事・庁内グループウェア直接はつながらない
インターネット接続系情報収集・対外メール接続あり

イメージとしては、マンションの内廊下に近いかもしれません。住民専用の廊下があり、外の道路とは直接つながっていない。だから安全、という考え方です。

このうちLGWAN接続系は、全国の自治体を結ぶ閉じたネットワークです。日常業務の多くがここで動いています。そして、この層はインターネットに直接つながりません。

つまり、外部クラウド上にある一般的な生成AIサービスには、原則として届かないということです。

ただし、近年は三層の対策そのものが見直され、業務端末をインターネット接続系に置く「βモデル」「β’モデル」を採用する団体も増えています。自庁がどのモデルかによって、選べる選択肢は変わります。

とはいえ、従来型のLGWAN中心の構成もまだ多数派です。その環境でどうしてもインターネット側の情報が必要なときは、画面転送や無害化という仕組みを使います。

画面転送とは、インターネット側で表示した画面の「絵」だけをLGWAN側の端末に送る方式のこと。無害化は、ファイルから危険な要素を取り除いてから受け渡す処理を指します。

安全性は保たれます。ただ、この方式はAIとの相性がよくありません。

会話しながら文章を練り上げる作業には、テンポが欠かせないからです。ひと呼吸置くたびに、思考の糸がぷつりと切れてしまいます。

しろ

実は私も昔これで失敗しました。画面転送環境なら大丈夫だろうと踏んで検証を進めたのですが、応答が返るまでの待ち時間で職員さんの集中が切れてしまって。教科書的には「つながればOK」でも、実務では体感速度まで見ないと使われません。

近年は、LGWAN側から安全にAIを呼び出せるゲートウェイ型のサービスも登場しています。とはいえ、どのサービスが自庁の要件を満たすかは別問題です。

契約形態やデータの保存場所、学習利用の有無。このあたりは各社の公式資料と自庁の調達要件で、必ず確認することをおすすめします。ネット上のまとめ記事だけで判断するのは、少し危ういかなと思います。

三層分離は「不便」ではなく「意図された安全設計」。回避策を探す前に、その前提を理解することが近道です。

ここまでで、「なぜ普通のAIが使えないのか」が見えてきました。次は、普段私たちが使っているツールとの違いを整理しますね。

ちなみに、三層分離が奪っているのは生成AIの利用機会だけではありません。ファイルの受け渡しや外部とのやり取りでも、毎日じわじわと時間が削られています。「うちの庁舎、なんでこんな手順なんだろう」と感じたことがある方は、こちらもあわせてどうぞ。

ChatGPTなど一般AIツールとの違い

一般向けの生成AIと、自治体向けの生成AI。似ているようで、設計の前提がまるで違います。

いちばん大きな違いは、入力したデータの行き先です。一般向けサービスは誰でもすぐ使える代わりに、データがどこで処理されるのか、利用者側からは見えにくい構造になっています。無料版と法人向けプランで扱いが異なる場合もあります。

実際、総務省の令和6年度調査では、導入サービスの2位にChatGPTの無料版が入っていました。手軽さゆえに、まず無料版から入る現場は少なくなかったのです。

ところが令和7年度調査では、上位4位をQommonsAI、LoGoAIアシスタント、自治体AI zevo、exaBase生成AI for 自治体という自治体向けサービスが占めるようになりました。試用フェーズから、庁内展開を前提とした専用サービスへ——現場の重心が移りつつあることがうかがえます。

一般向けAIツールと自治体向けAIサービスの違いを比較した図。接続経路・学習利用・ログ管理の3点を対比し、差は性能ではなくデータの扱いと責任の所在にあることを示す

主な違いを、表で並べてみますね。

比較項目一般向けAIツール自治体向けAIサービス
接続経路インターネット経由閉域網・専用ゲートウェイ経由が中心
入力データの学習利用プランにより異なる学習に使わない契約を前提とする例が多い
利用ログの管理個人アカウント単位組織単位で管理できる設計が一般的
導入の手軽さすぐ使える調達・審査に時間がかかる
費用無料〜低額相応のコストが必要

たとえるなら、駅前のコインロッカーと銀行の貸金庫の違いでしょうか。どちらも荷物は預かってくれます。けれど、記録の残り方も責任の重さも同じではありません。

なお、個別サービスの安全性については、必ず提供事業者の公式情報と契約書面でご確認ください。第三者のレビュー記事だけを根拠に「安全」と判断するのは避けたいところです。

もちろん、自治体向けにもデメリットはあります。選べるモデルが限られる、最新機能の反映が遅れる、そして費用がかかる。この3点は、導入前にきちんと天秤にかけておきたいですね。

逆の立場の意見も紹介します。「厳しすぎる制約が、かえって職員のAIリテラシーを育てない」という指摘です。

一理あるなと感じます。触れないものは、学べません。だからこそ、研修環境だけはインターネット接続系に用意して、まず慣れてもらう。そんな二段構えを選ぶ団体も出てきています。

違いは「性能」ではなく「データの扱いと責任の所在」。ここを説明できると、庁内合意はぐっと進みます。

「じゃあ専用サービスを入れれば安心なのね」と思われるかもしれません。ですが、話はそう単純でもないのです。

個人情報と誤回答に潜むリスク

環境を整えても、リスクはゼロになりません。危ないのは入口と出口、つまり「何を入れるか」と「何を信じるか」です。

入口のリスクは、個人情報です。住民の氏名や住所、相談記録。うっかり貼り付ければ、それは庁外への情報提供になりかねません。

総務省の資料でも、個人情報の入力による漏えいリスクや、意図しない著作権侵害への対応が課題として挙げられています(総務省「生成AI利活用に係る今後の対応方針等について」)。

出口のリスクは、ハルシネーションです。

ハルシネーションとは、事実ではない内容をAIがもっともらしく生成してしまう現象のこと。デジタル庁も「テキスト生成AI利活用におけるリスクへの対策ガイドブック(α版)」で、主要リスクのひとつとして整理しています。あわせて2025年5月には「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」も公開されており、調達段階の判断材料として目を通しておくと安心です(デジタル庁)。

これが本当に厄介なんです。文章としては整っているので、忙しいときほど見過ごしてしまいます。

存在しない条例番号。すでに廃止された制度の名称。もっともらしい数字。そのまま住民向け案内に載せてしまえば、行政への信頼に直結します。

生成AI利用時のリスクを入口と出口に分けて示した図。入口は個人情報の入力、出口は誤った条例名などのハルシネーションで、匿名化ルールと原典確認が対策と示す

入口と出口を並べると、対策の勘どころが見えてきます。

リスクの位置具体例基本の対策
入口(入力)氏名・住所・相談内容の貼り付け匿名化ルールと入力禁止項目の明文化
出口(出力)誤った条例名・古い制度・架空の数値原典確認と複数名でのダブルチェック

対策そのものはシンプルです。住民に出す文書は、必ず人が原典に当たる。可能なら複数名の目を通す。

AIは下書き係、最終責任は職員。この役割分担を庁内で言語化しないまま運用を始めるのが、いちばん危ない進め方です。

入力ルールと確認フローをセットで決める。技術より先に、この2つを整えるのが安全な立ち上げ方です。

そしてもうひとつ。入口と出口の間に、見落とされがちな部分が残っています。

見落としがちな権限管理の落とし穴

意外と後回しにされるのが、誰がどこまで使えるかという権限の設計です。ここが甘いと、せっかく整えた安全な環境も台無しになります。

なぜでしょうか。生成AIは、庁内文書を読み込ませて答えさせる使い方が広がっているからです。要綱やマニュアルを覚えさせれば、新任の職員さんでもすぐ答えにたどり着けます。

便利な半面、危うさもあります。AIは、渡された資料を「誰に見せてよいか」までは判断してくれません。

人事評価や相談記録が学習対象に紛れ込んでいれば、権限のない職員にも要約して答えてしまう可能性があります。

紙のファイルなら、鍵付きの棚に入れておけば済みました。データにすると、その鍵をシステム側で設計し直す必要が出てきます。

IPAの「組織における内部不正防止ガイドライン」でも、クラウド利用時のアクセス権限管理やログの取得が重要な対策として整理されています(IPA)。生成AIも、この延長線上にあると考えると分かりやすいですね。

具体的には、次の3点を最初に決めておくと安心です。

  • 部署ごとの利用範囲と、参照させる文書の切り分け
  • 利用ログを誰がいつ確認するかという運用ルール
  • 異動や退職に合わせたアカウントの停止手順

特に3つ目は忘れられがちです。年度末の慌ただしい時期、使われないアカウントだけが静かに残り続ける。よくある話なんです。

なお、部署ごとにアカウントを共用する場合は、ログが個人に紐づかない点も押さえておきたいところです。共用で回すなら、入力者を記録する運用ルールをセットで決めておくと安心です。

しろ

実務では文書1件ごとの権限制御は回りません。まずは『全職員向け』と『所管課のみ』の2階層に分け、とにかく運用を回し始めるのがおすすめです。

一方で、権限を絞りすぎるのも考えものです。使いにくい仕組みは、結局誰も使わなくなります。

締めるところと、緩めるところ。このバランスの取り方こそが、導入の成否を分ける分岐点になります。

権限管理は「導入後の運用課題」ではなく「導入前の設計課題」。棚卸しは、いま始めても早すぎることはありません。

exaBase 生成AIを自治体で導入する

自治体が生成AIサービスを選定する際の3つの確認項目を示す図。閉域網への対応、データ処理の場所、権限の設定単位を挙げ、それぞれが3つの壁に対応することを示す
ポイント
  • LGWAN対応でexaBaseが選ばれる理由
  • 登録から利用開始までの導入手順
  • 要約・回答案・資料作成の実力は
  • 窓口対応と会議録で効きやすい場面
  • 料金・研修・ガイドラインの整え方

LGWAN対応でexaBaseが選ばれる理由

exaBase 生成AIが候補に挙がるいちばんの理由は、前述の通り、最も厚い壁だったネットワークの問題に正面から答えている点にあります。

公式サイトによれば、行政専用ネットワークであるLGWAN環境で利用でき、入力内容はAIの学習データに使われない設計とされています。データ処理も国内で完結すると案内されています(エクサウィザーズ「exaBase 生成AI for 自治体」)。

処理を担うのは、Azure OpenAI Serviceの東日本リージョン。サーバー上でのデータ保持期間は0日間と説明されています。

ここ、地味に大事なんです。「海外のサーバーに残るのでは」という質問は、庁内説明会でほぼ必ず出てきますから。

個人情報保護委員会も、生成AIサービスへ個人情報を入力する際は利用目的の範囲内かを確認するよう注意喚起を出しています(個人情報保護委員会)。処理場所とデータの残り方は、最初に押さえておきたい論点ですね。

もうひとつ、個人的に注目したのが権限まわりです。データ連携機能で庁内文書を取り込んだ際、フォルダごとにアクセス権限を設定できると説明されています。

前半でお話しした権限管理の落とし穴。あれを製品側の機能でどこまで受け止められるかは、選定の分かれ目になります。

前半で整理した3つの壁と、対応関係を並べてみますね。

前半で挙げた壁対応する機能・仕組み(公式説明より)
ネットワークの壁LGWAN環境での利用に対応
ルールの壁禁止ワードの自動ブロック、ログの蓄積
人の壁行政向けプロンプトテンプレート、研修メニュー

導入実績も見ておきましょう。公式のよくある質問では、福井県や兵庫県、東京都教育委員会などの名前が挙げられています。

エクサウィザーズの発表では、exaBase 生成AI for 自治体は、全国47都道府県の53%にあたる25の都道府県庁をはじめ、200以上の官公庁・自治体で利用されています(2026年2月現在)。

運用パッケージを提供するイマクリエによれば、同パッケージ単体でも全国50自治体以上・延べ2万ID以上の発行実績があり、次年度継続率は100%とされています(2025年9月時点)。

ただし、実績の多さと自庁への適合は別の話です。ネットワーク構成も、扱う情報の機微さも、団体ごとに違いますよね。

セキュリティ要件や契約条件は、必ず提供事業者の公式資料と最新の見積でご確認ください。本記事の内容も執筆時点の公開情報にもとづくもので、仕様は変更される場合があります。

なお、庁内説明で必ず突っ込まれるセキュリティ論点は、この記事で触れた3点だけではありません。稟議に上げる前に押さえておきたい確認事項を、別記事で5つに整理しています。情報セキュリティ担当への説明資料を作る段階で、目を通しておくと安心です。

しろ

選定時は必ず「データフロー図」を1枚書いてもらうようお願いしています。どの経路を通り、どこに何日残るのか。この図がないまま稟議に回すと、情報セキュリティ担当との差し戻しが3往復くらい発生するんです。

選定基準は知名度ではなく、閉域網対応・データ処理場所・権限設定の3点。ここを公式資料で確認できるかが出発点です。

では、実際に使い始めるまでの流れを追ってみましょう。

登録から利用開始までの導入手順

導入の山場は、システムの設定ではありません。庁内の合意形成と、アカウントの配り方です。

おおまかには、次の5ステップで進みます。

exaBase生成AIを自治体へ導入する5ステップのタイムライン図。資料請求から接続方式確認、ルール素案、アカウント発行と研修、段階展開までの流れと所要期間の目安を示す
ステップやること目安期間
1資料請求とトライアル申し込み1〜2週間
2ネットワークと接続方式の確認2〜4週間
3利用ルールの素案づくり2〜4週間
4アカウント発行と初期研修2週間
5小さく試して、対象を広げる1〜3か月

まずはトライアルです。運用パッケージを提供するイマクリエでは、アカウント発行数の制限なく試せる無料トライアルを受け付けていると案内されています。いきなり全庁導入を決めなくてよいのは、心強いところですね。

次に、接続方式の確認。ここは情報政策担当と二人三脚で進める部分です。

LGWAN側から使うのか、インターネット接続系から使うのか。この選択で、その後の運用がまるで変わります。前半でお話しした三層分離の話が、ここで効いてきます。

3番目のルール素案は、後回しにしないでください。

「アカウントは配ったけれど、使ってよい範囲が決まっていない」。この状態が、現場をいちばん迷わせます。結果として、誰も使わない高価なツールになりがちです。

アカウント発行では、同時アクセス数に応じた定額制という仕組みが効いてきます。人数課金ではないため、費用を気にせず配れる。ここは素直に大きな利点です。
ただし、費用の壁が消えても、発行と更新の手間の壁は残ります。

しろ

「アカウント無制限」と聞くと全職員分を想像しますが、実際は課ごとに1〜数アカウントという団体が多いです。ライセンス費用ではなく、発行と更新の手間がボトルネックなんですよね。まずは各課の推進担当に配って、使い方が固まってから広げる。この順番のほうが現実的です。

とはいえ、いきなり全庁展開はおすすめしません。個人的には、まず2〜3課で1か月ほど回すのがちょうどよいと感じています。

小さく始めれば、つまずきどころが見えます。そこを潰してから広げたほうが、結果的には早いんですよね。

なお、大規模団体では年度替わりのアカウント更新が大きな負担になります。運用パッケージ側では、1,000〜2,000名規模の登録・更新代行に対応した実績が紹介されています。

人事異動の集中する3〜4月に、数千件のアカウント更新を情報政策担当ひとりで回す。この現実的なつらさを想像すると、代行支援の有無は無視できない比較軸になります。

手順の要は「接続方式の確定」と「ルール素案」を早い段階で並走させること。パイロット部署から広げるのが最短ルートです。

さて、環境が整ったところで。肝心の中身はどうなのでしょうか。

要約・回答案・資料作成の実力は

期待していいのは「ゼロから作る力」ではなく「8割まで一気に運ぶ力」です。 ここを取り違えると、初日でがっかりしてしまいます。

理由は、行政文書の性質にあります。挨拶文にも、答弁にも、通知文にも、ある程度決まった型があるからです。型のある文章ほど、AIは得意にしています。

総務省の最新調査でも、活用事例は回答の多い順に「あいさつ文案の作成」「議事録の要約」「議会の想定問答の文案の作成」「メール文案の作成」「企画書案の作成」と並びました(総務省「自治体における生成AI導入状況(令和7年度)」)。
全国の現場が、同じところに手応えを感じているわけです。

exaBaseには、行政機関向けのプロンプトテンプレートが標準搭載されていると案内されています。広報文作成、答弁作成、政策立案、アイデア出しなど。

このテンプレート、かなり大きな差になります。プロンプトを一から書ける職員さんは、そう多くありません。テンプレートを選ぶだけで形になるなら、心理的なハードルはぐっと下がります。

さらに2026年2月の発表では、AIエージェント機能の標準搭載(議事録作成、スライド資料作成、法令リサーチなど)と、画像・音声を含むマルチモーダル対応も案内されています。

RAGと呼ばれるデータ連携機能も見逃せません。

RAGとは、手元の文書をAIに読み込ませ、その内容にもとづいて答えさせる仕組みのこと。取り込める形式はPDF、Word、Excel、PowerPoint、CSV、テキストなどとされています(案内媒体により記載が異なるため、最新の対応形式は公式資料でご確認ください)。

過去の調達仕様書や交付金の要綱、庁内マニュアル。読み込ませてから質問すると、根拠となる箇所を踏まえた回答が返ってきます。分厚いファイルを行き来する時間が減るのは、素直にありがたいですね。

一方で、限界もはっきりあります。得意と不得意を整理しておきましょう。

生成AIの得意・不得意を業務別ゲージで示した図。議事録要約や挨拶文の下書きは高評価、数値を含む資料作成やゼロからの政策立案は低評価で、金額や条文は人の確認が必要と示す
業務期待できる度合い使うときのコツ
議事録の要約高い決定事項と宿題を分けて指示する
挨拶文・広報文の下書き高い過去の類似文を1本渡す
要綱にもとづく回答案中程度参照した箇所を必ず示させる
数値を含む資料作成低い数字は人が原典から転記する
ゼロからの政策立案低い発想の壁打ち相手として使う

金額、期日、条文番号。この3つは、もっともらしい誤りが混ざりやすい代表格です。人が原典に当たる前提で使ってください。

そして、真っ白な状態からの企画立案。ここはまだ人の仕事です。AIは、あなたの頭の中にある違和感までは拾ってくれませんから。

AIに任せるのは「型のある文章の8割」まで。残り2割の判断と検証が、職員の専門性そのものです。

では、日々の業務ではどんな場面で効いてくるのでしょうか。

窓口対応と会議録で効きやすい場面

効果がいちばん見えやすいのは、窓口の裏側と、会議のあとの時間帯です。 どちらも「調べる」「まとめる」が中心の作業だからでしょう。

窓口から見ていきますね。住民の方から制度の細かい条件を尋ねられたとき、これまでは要綱を探すところから始まっていました。新任の職員さんなら、先輩の手を止めて聞くしかない場面もあります。

庁内マニュアルを取り込んだAIに聞ければ、その最初の一歩が短くなります。答えそのものではなく、「どの資料のどこを見ればいいか」の当たりがつく。この効果が大きいんです。

会議録のほうは、もっと直接的です。1時間の会議を文字起こしし、要点と決定事項、宿題事項に整理する。この作業が、体感で半分以下になります。

夕方5時。会議が終わって、机に戻って、まっさらな画面と向き合う。あの重たい時間が軽くなるだけでも、導入の価値はあると思います。

効果を数字で示せる点も見逃せません。exaBaseには組織や職員の業務削減時間を見える化する機能があり、費用対効果の算出に活用できると説明されています。

議会や財政部門への説明では、この手のデータが物を言います。「なんとなく楽になった」では、翌年度の予算はつきませんから。

もっとも、良い話ばかりではありません。逆の立場からの声も紹介しておきますね。

「要約に頼ると、若手が議論の流れを追う訓練を積めなくなる」。ある自治体の管理職の方から、こう言われたことがあります。

一理あるなと感じました。だからその団体では、新任1年目だけは自力で骨子を書き、AIの要約と突き合わせる運用にしたそうです。工夫次第で、育成と効率化は両立できます。

注意点も2つ挙げておきます。

ひとつは文字起こしの精度です。方言や専門用語、複数人が同時に話す場面では崩れます。マイク環境の見直しとセットで考えてください。もうひとつは公開資料としての会議録。正式な記録には発言の趣旨が正確に残っている必要があり、要約はあくまで下書きの位置づけです。

狙い目は「調べる・まとめる」の下ごしらえ。削減時間を記録しておくと、次年度予算の説得材料になります。

最後に、運用を支える土台の話をさせてください。

料金・研修・ガイドラインの整え方

長く使い続けられるかどうかは、機能よりも「予算・研修・ルール」の3点セットで決まります。 ここを整えた団体は、翌年度も自然と続いていきます。

生成AI運用を継続するための3点セットを示す図。予算・研修・ルールを3本の柱で表し、職員1人あたり月額約50円という試算例を併記。1つでも欠けると継続が難しいと示す

まず料金です。exaBaseは同時アクセス数の上限に応じた定額制で、たとえば同時アクセス30の場合は月額5万円という例が公式サイトに示されています。アカウント数に上限はないとも案内されています。

仮に職員1,000人の団体が同時アクセス30のプランを使うなら、1人あたり月50円ほど。もちろん実際の同時アクセス上限は職員数や利用時間帯に応じて選ぶ必要がありますが、アカウント数が増えても費用が跳ねない設計は、財政部門への説明がしやすくなります。

実際には部署単位で配る団体も多いので、費用対効果を測るときは「配ったアカウント数」ではなく「恩恵を受けた職員数」で見るほうが実態に合います。

ただし、プランや条件は変わる可能性があります。最新の料金は、必ず公式窓口でお見積りを取ってくださいね。

次に研修です。ここを軽く見ると、一部の職員だけが使う「もったいない状態」になります。

運用パッケージでは、習熟度別の研修アーカイブを24時間365日受講できる形で提供していると紹介されています。交代制勤務や出先機関の多い自治体では、この形式が効いてきます。

そして、ガイドラインです。前述の通り、総務省は2025年12月にガイドブックを第4版へ改訂し、自治体が作成する「生成AIシステム利用ガイドライン」のひな形を収録しました(総務省「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<導入手順編>」)。

ゼロから書く必要はありません。ひな形を土台に、自庁の実情へ合わせて削ったり足したりする。この進め方がいちばん現実的です。

盛り込むべき項目を、最低限だけ挙げておきますね。

  • 入力してよい情報と、禁止する情報の具体例
  • 出力を庁外へ出す前の確認手順と、責任の所在
  • アカウントの発行・停止と、ログの確認ルール

ちなみにexaBaseには、個人情報や金融情報、任意の禁止ワードを自動でブロックする機能があると説明されています。ログも自動で蓄積され、管理者が入力内容を確認できるとのことです。

しろ

最初から完璧なガイドラインを目指すと挫折します。まずはA4用紙2枚程度で、禁止事項と確認手順だけを記載した『第1版』を出して運用を始めましょう。

とはいえ、機能はあくまで安全網です。ルールと研修で人の側を整えないと、遅かれ早かれ抜け道ができてしまいます。

予算・研修・ルールの3点セットを同時に走らせる。どれか1つでも欠けると、翌年度の継続が危うくなります。

最後に、少しだけ本音を。完璧な体制が整うのを待っていたら、いつまでも始められません。

小さく試して、ルールを育てながら広げていく。遠回りに見えて、この進め方がいちばん確実だと感じています。

まとめ:exaBase 生成AIを自治体で安心して使いこなすためのポイント

まとめ
  • LGWANで一般の生成AIが使えないのは、三層分離という意図された安全設計が理由です。不便さの正体を知ることが、解決の第一歩になります。
  • サービス選定で見るべきは知名度ではなく、閉域網への対応、データ処理の場所、そしてフォルダ単位の権限設定。この3点を公式資料で確認できるかが判断軸です。
  • exaBaseが得意なのは、議事録の要約や広報文の下書きなど「型のある文章を8割まで運ぶ」仕事。金額・期日・条文番号は、必ず人が原典に当たってください。
  • 全庁一斉ではなく、まず2〜3課のパイロットから。つまずきどころを潰してから広げるほうが、結果的に早く定着します。
  • 予算・研修・ルールは3点セットで走らせましょう。ガイドラインは総務省のひな形を土台に、A4で2枚の第1版から始めれば十分です。

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