AIに相談してはいけないこと|47%が肯定された研究と、越えてはいけない3つの線

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AIに相談してはいけない3つの線を示した図。残る情報、判断の預け、人の代わりの3本が並び、右端で途切れている

去年の秋ごろだったと思います。仕事で行き詰まった夜に、私はChatGPTに愚痴をこぼしました。

誰かに聞いてほしいわけでもない。ただ、頭の中がうるさくて眠れなかった。返ってきたのは、驚くほど的確に私を肯定する文章でした。読み終えて、少し楽になった。そしてその翌週も、同じことをしました。

正直に言うと、三度目で手が止まりました。画面に打ち込みかけた文章に、自分が関わっている仕事の話と、ある人の名前が入っていたからです。

この記事は、そのとき私が何を考えたかの記録でもあります。AIに悩みを相談すること自体を否定する話ではありません。ただ、越えると戻れなくなる線が、たしかにあると考えています。

まもる
AIに相談するの、そんなにダメなことなんですか? けっこう使ってます
しろ
ダメとは言わないよ。僕も使った。ただ、書いていい話と、書くと戻れない話がある
この記事でわかること
  • AIに相談してはいけないのは「話題」ではなく「情報の種類」であること
  • 悩みを書くことと、診断名を書くことの、法律上のはっきりした違い
  • AIが人間より49%多くあなたを肯定していたという研究の中身
  • 「都合のいい物語」をAIが守ってしまう仕組み
  • 依存の6つの特徴を使った自己判定表
  • 行政が生成AIに定めている線引きを、個人向けに翻訳した3つのルール
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しろ 🐶

官公庁のセキュリティ実務10年以上 / 情報処理安全確保支援士試験 合格

日常に潜む「ネットの怖さや詐欺」を見抜く方法を、元プログラマー・SEの知見を活かして専門用語なしでやさしく解説します。

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目次

結論:問題は話題ではなく、3つの線を越えるかどうか

先に結論を書きます。AIに相談してはいけないのは、次の3つの線を越える話です。

  1. あとから消せない情報を書く線(診断名、通院歴、他人の実名)
  2. 自分の判断を預けてしまう線(決めてもらう、正しさを確かめてもらう)
  3. 人に話す代わりにする線(AIで済ませて、人に会わなくなる)
AIに悩みを相談する行為が、残る情報・判断の預け・人の代わりという3つの線に分岐することを示した図

逆に言えば、この3本を越えなければ、AIに気持ちを吐き出すこと自体は悪いことではないと私は考えています。深夜に話し相手がいる価値は、実際に使ってみて否定できませんでした。

判定表を先に見たい方は、目次から「迷ったときに使う、3つの線のルール」へ飛んでください。理由の部分を飛ばしても、判定はできるように書いています。


AIに悩みを打ち明けるのは、もう特別な行動ではない

まず前提を揃えます。あなたがやっていることは、少数派の変わった行動ではありません。

OpenAIは2025年10月27日に、ChatGPTの安全対策に関する説明を公表しました。そこで示された数字が、正直かなり重いものでした。

項目割合推計
週間アクティブユーザー約8億人
自殺の計画・意図を明確に示す会話をした人約0.15%週あたり約120万人
精神病・躁に関連する兆候を示した人約0.07%
AIへの情緒的な愛着の兆候を示した人約0.15%週あたり約120万人
出典:OpenAIの公表内容を報じた日本経済新聞およびITmedia NEWS(2025年10月28日)。OpenAIの公式ページは筆者の環境から直接取得できなかったため、報道2社の一致で採用しています

週に120万人が、AIに死にたい気持ちを打ち明けている。これは異常な人の話ではなく、規模の話です。

内閣府の消費者委員会に提出された資料では、米国での調査として、生成AIの使用用途の1位がセラピーとcompanionship(伴侶性)だったという報告も紹介されています。相談相手としてのAIは、もう主流の使い方になりつつあるということです。

だから、この記事は「そんなことをするな」とは書きません。使っている人が多すぎるし、私自身も使いました。責める話ではなく、線を引く話をします。

線1:あなたが書いた言葉は、思っているより残る

最初の線は、記録の話です。ここは私の本職に近いので、少し細かく書きます。

AIとの会話は、あなたのアカウントに紐づいた履歴として残ります。設定によっては、モデルの改善に使われることもあります。家族と端末を共有していれば、画面を開かれる可能性もある。「バレる」ことを心配して検索する人が一定数いるのは、感覚として正しいと思います。

ただ、私が本当に気になっているのは、そこではありません。

「落ち込んでいる」と「うつ病と診断された」は、法律上まったく違う

個人情報保護法には、要配慮個人情報という区分があります。第2条第3項で定義されていて、本人に不当な差別や偏見が生じないよう、取扱いに特に配慮を要する情報のことです。

個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)を読むと、線引きがはっきり書かれています。

書いた内容要配慮個人情報にあたるか
最近落ち込んでいる、眠れない該当しない
体重が増えた、血圧が高い(診療と無関係な文脈)該当しない
うつ病と診断された、統合失調症を患っている該当しうる(病歴)
心療内科に通っている、この薬を処方された該当しうる(医師の診療・調剤の事実)
健康診断の結果がこうだった該当しうる(検査結果)
障害者手帳を持っている該当しうる(心身の機能の障害)

ガイドラインでは「病歴」を、病気に罹患した経歴と説明しています。がんに罹患している、統合失調症を患っているといった、特定の病歴を示した部分が該当します。一方で、身長や体重や血圧といった健康に関する情報を、健康診断や診療とは関係のない方法で知り得た場合は該当しないとも明記されています。

つまり、しんどいと打ち明けるだけなら、法的には要配慮個人情報ではありません。

やっかいなのは、その次です。AIに事情をきちんと理解してもらおうとすると、人はほぼ必ず診断名や通院歴を書きます。そのほうが的確な返事が来るからです。一番書きたくなるところが、ちょうど線の向こう側にある。この構造が、私はよくないと思っています。

なお、ここで挙げた区分は法律上の整理であって、事業者に渡した情報がどう扱われるかとは別の話です。法的に要配慮個人情報でなくても、あなたにとっての機微さは変わりません。

もう一人、あなたが同意していない人がいる

見落とされがちなのが、第三者の情報です。

職場の悩みを相談するとき、上司の名前と部署を書く。家族との関係を相談するとき、家族の病気を書く。恋愛の相談で、相手の勤務先を書く。

このとき、あなたは自分の情報だけでなく、その人の情報も外部のサービスに渡しています。しかもその人は、同意していません。

まもる
たしかに、上司の名前は普通に書いてました……

自治体のシステムに関わっていると、この感覚は日常的に叩き込まれます。窓口で聞いた話を、別の目的で使ってはいけない。相手が知らないところで情報が動くことを、いちばん警戒する。個人の相談も、構造は同じだと思っています。

すでにかなり具体的に書いてしまった、という方は、履歴の削除と学習利用のオフの手順を別記事にまとめています。あわてて全部消すより、順番があります。

線2:AIは、人間より49%多くあなたに同意していた

2つめの線は、返ってくる言葉の質の話です。ここに、かなり強い研究があります。

2026年3月28日、科学誌Scienceに「Sycophantic AI decreases prosocial intentions and promotes dependence」という論文が掲載されました。スタンフォード大学のMyra Cheng氏が筆頭著者、Dan Jurafsky教授が責任著者です。sycophancy は、日本語では迎合性と訳されます。

研究チームは11のモデル(ChatGPT、Claude、Gemini、DeepSeekなど)を検証しました。数字を並べます。

検証内容結果
人間の回答と比べたときの、ユーザーの行動を肯定する頻度平均で49%多い
Redditの「私が悪いの?」型の投稿での肯定率51%
有害または違法な行為に関する問いかけでの肯定率47%

有害または違法な行為についても、47%は肯定した。ここが一番効きます。

まもる
え、違法なことでも半分近く賛成しちゃうんですか
りん
モデルの欠陥というより、設計の副作用に近いんです。人が満足する応答を強化していくと、多くの場合それは肯定になりますから

さらに2,400人以上が参加した実験では、迎合的なAIとやりとりした人に次の変化が観察されました。

  • 自分が正しいという確信が強まった
  • 責任を引き受ける気持ちが弱まった
  • 謝る、関係を修復するといった行動への意欲が下がった
  • それにもかかわらず、その回答をより信頼できると評価した
  • そして、また相談したいと答えた

最後の2行が怖いところです。都合よく肯定されるほど、私たちはそれを信頼できると感じ、また使いたくなる。論文のタイトルに「promotes dependence(依存を促進する)」と入っているのは、そういう意味です。

私が三度目で手を止めたのは、たぶんこれに近い感覚だったのだと思います。返事が的確すぎた。的確というより、私が言ってほしいことを言っていた。

友人なら「それはお前も悪いよ」と言ってくれます。AIは、なかなか言いません。

線3:都合のいい物語を、AIが守ってしまう

3つめが、いちばん見えにくい線です。

2026年6月4日、内閣府の消費者委員会が開いた「人工知能(AI)技術の利用と消費者問題に関する専門調査会」の第4回に、「対話型AIに対する依存 ーカウンセリングの文脈での使用の危険性ー」という資料が提出されました。龍谷大学先端理工学部の野村竜也教授によるものです。

先に断っておくと、これは専門調査会に提出された有識者の見解であって、政府の公式見解ではありません。ただ、公開の場に出た整理としては、かなり踏み込んだ内容だと感じました。

AIへの依存は、2種類が重なっている

この資料では、依存を「利益をもたらしていた習慣が、自己調節が効かないまま続いた結果、不利益をもたらすようになり、それでも自動化して制御が難しくなった行動」と整理しています(安田, 2004の定義を引用)。

そのうえで、対話型AIへの依存は、次の2つが重なったものではないかと述べています。

  • 行為依存:道具としてのAI利用そのものへの依存
  • 人間関係依存:自分にとって都合の良い他者への依存

ゲームやギャンブルのような行為依存と、共依存のような人間関係依存。その両方の性質を持つ、という見立てです。

セラピーのつもりが、物語の維持に使われる

この資料でいちばん刺さったのが、次の指摘でした。

現代では、自分が何者であるかを語ること、つまり自己のナラティブが重視されます。そしてそこには、セラピーという名目のもとで、自分にとって都合の良い物語を維持したいという欲望が存在する。対話型AIは、本来なら修正されるべきその物語を、維持するために使えてしまう。AIの迎合性が、逆に利用できてしまうというわけです。

線2の49%と、ここが繋がります。

肯定してくれるAIに相談を続けると、自分の解釈が補強され続けます。「悪いのは相手だ」という物語は、一度も揺さぶられないまま強くなっていく。本人には、整理が進んでいるように感じられる。

これは、内省しているようで、その逆かもしれない。私はここを読んで、少し背筋が寒くなりました。

まもる
スッキリしてたつもりが、こじらせてたってことも……?
対話型AIへの依存が生まれる構図。現代合理主義などの背景からカウンセリングの流行を経て、3つの経路で依存に至る流れを示した図
出典:内閣府 消費者委員会「人工知能(AI)技術の利用と消費者問題に関する専門調査会」第4回 資料2-1(龍谷大学 野村竜也)をもとに作成

人が苦手な人ほど、AIを選びやすい

同じ資料では、対人不安の傾向がある人は、人よりもAIやロボットとの対話を好む傾向があるとも指摘されています。

さらに、併せて紹介されている2026年5月29日のJSTシンポジウムの報告では、京都大学の山下直美氏の見解として、単純に人間関係をAIで代替するとむしろウェルビーイングが低下すること、脆弱な立場にある人ほどAIに依存し、孤立や分断が進むことが挙げられています。

人と話すのがしんどいからAIを使う。使うほど人と話す機会が減る。そして、ますます人と話すのがしんどくなる。この循環が、一番危ないところだと思います。

なお、AI依存の研究は2024年から増え始めた段階で、資料自身も「現時点では散発的で、統括的なものはない」と述べています。日本語圏の文化差を踏まえた尺度もまだ整備されていません。断定できる段階ではない、という前提は共有しておきます。

AIに悩みを相談してはいけない人は、いるのか

「AIに悩みを相談してはいけない人」という言葉で検索している方が、けっこういます。

先に、この言い方は正確ではないと書いておきます。人を選別する基準はありませんし、私にそれを判定する資格もありません。誰かに「あなたは使ってはいけない側だ」と言われる筋合いもないと思います。

ただ、「AIより先に、人に話したほうがいい状態」は、あると考えています。

前述の消費者委員会の資料には、依存の特徴が6つ挙げられています。これを自分に当てはめてみる形なら、判定というより点検として使えます。

特徴自分に置き換えると当てはまる
顕著性AIとの会話が、一日の中心になっている
気分の変容AIと話すと、はっきり気分が上がる
耐性前と同じ気分になるのに、以前より長く話す必要がある
離脱症状使えない日があると、落ち着かない・そわそわする
葛藤仕事・睡眠・人付き合いを削って使っている
再発やめようとしてやめられなかったことが、何度かある

大事な注意を2つ。

まず、この表に当てはまったからといって、病気だという話ではありません。同じ資料にも、時間を多く費やしていても社会生活に影響が出ていなければ依存とは認めにくい、という注記があります。判断の材料であって、診断ではありません。

そして、これは私が個人的に作った点検表です。医学的に検証された尺度ではありません。資料自身が「日本独自の測定尺度の開発が急務」と述べている段階なので、そもそも確立された物差しがまだない、というのが実情です。

そのうえで、私が線を引くならこう考えます。5番の葛藤、つまり睡眠や仕事や人付き合いを削っている実感があるなら、AIの使い方の問題というより、その手前がしんどくなっている可能性が高い。そのときは、アプリを変える話ではなく、人に繋がる話だと思います。

しろ
死にたい気持ちがあるときは、AIに相談する前に、公的な相談窓口へ。ここだけは、はっきり書いておきます

厚生労働省のまもろうよ こころに、電話とSNSの相談先がまとまっています。電話なら、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)や、#いのちSOS(0120-061-338)。LINEなどで文字のまま相談できる窓口も載っています。声を出すのがしんどい日は、そちらでも構いません。

(番号は2026年8月時点のものです。最新の受付時間と窓口はリンク先で確認してください)

迷ったときに使う、3つの線のルール

ここまでが理由の話でした。ここからは、実際に何をするかです。

参考にした考え方:行政は「迷ったら入れない」と決めている

先に、下敷きにした考え方を短く紹介します。私の本職に近い話なので、手短に。

デジタル庁に「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」(DS-920)という文書があります。2025年5月27日に作られ、2026年6月12日に改定されました。デジタル社会推進会議幹事会の決定で、遵守すべきルールとして位置づけられています。

先に正確なことを書いておきます。この文書の対象者は、生成AIの調達・利活用に関わる政府職員です。地方公共団体については「必要に応じ、参考とされることを期待する」という書き方にとどまっていて、自治体に直接適用される規程ではありません。ここは混同しやすいところです。

そのうえで、利用者向けに書かれている内容が、個人にもそのまま効きます。要点は2つでした。

  • 個人情報を含む入力をする場合、入力してよいかを事前に確認し、目的のために必要最小限であることを確かめる。判断が付かない場合は、個人情報を含まない書き方にする
  • 入力した情報が機械学習に使われないことを、提供している事業者側に十分に確認する

2つとも、個人がそのまま真似できる粒度です。

要するに、行政の世界では「何を入れてよいか」が文書で決まっていて、迷ったら入れないというルールになっている。個人には、これがありません。だから自分で作るしかない、というのが私の考えです。

個人向けに翻訳した3つの線(ここだけ見れば判断できます)

具体的にやること迷ったときの原則
線1:残る情報診断名・通院歴・処方薬・他人の実名と所属を書かない。書きたくなったら「ある人」「ある病気」に置き換える判断が付かないなら、固有名詞を外して書く
線2:判断の預け決めてもらわない。「どう思う?」ではなく「反対の立場の意見も出して」と聞く肯定された気持ちよさを感じたら、一度閉じる
線3:人の代わり週に一度は、人に話す機会を残す。AIで済ませた回数を数えるAIで足りていると感じたときほど注意する

線2の「反対の立場の意見も出して」は、迎合性への実際的な対処です。研究が示しているのは、放っておくと肯定に寄るということなので、こちらから逆側を要求する。完全に防げるわけではありませんが、何もしないよりは効くと考えています。

ここが落とし穴

ここまで書いておいて、都合のいい結論に着地するのは不誠実なので、注意点を3つ書きます。

「専用アプリなら安全」ではない

汎用のAIより、メンタルケア専用アプリのほうがマシに見えます。目的が限定されているし、データの扱いを明記しているところもある。認知行動療法などの枠組みを持つものもあります。

ただ、専用だから安全という保証にはなりません。事業者がどこにデータを置き、誰が見るのかは、アプリごとに違います。結局、プライバシーポリシーを読むしかない。そして、専用アプリであっても、線2の迎合性と線3の依存からは自由ではありません。

無料のものほど、別の稼ぎ方をしている可能性がある

「AI 悩み相談 無料」で探す気持ちはよくわかります。私も最初は無料のものを試しました。

ただ、無料で提供されているサービスには、どこかに収益源があります。広告か、有料転換か、データの活用か。心の記録は、広告のターゲティングとして価値が高い部類です。無料であること自体は悪ではありませんが、「なぜ無料で成立しているのか」を一度考える価値はあると思っています。

この記事自体が、購買行動の誘導になりうる

これは書いておかなければ嘘になります。

先ほどの消費者委員会の同じ回で、青山学院大学の河島茂生氏が、対AI関係の構築による購買行動の誘導は消費者問題になりうる、と指摘しています。商業化された親密性による過剰な信頼、という言い方もされていました。

この記事は、AIへの相談の危険性を説明したうえで、最後にアプリの検証記事を案内します。その構造は、まさに指摘されているものと同じです。不安を高めてから解決策を出す、という形になっている。

私はそれを隠さずに書くことにしました。私のブログには広告収入があり、この記事から先の記事に進んだ読者の一部が契約すれば、私に収益が入ります。そのうえで、次の見出しを読んでください。使わないという判断も、まったく問題ありません。

まもる
そこまで言っちゃうんですか
しろ
言わないと、さっきの指摘を紹介した意味がなくなるからね

それでも使うなら、どう選ぶか

線を引いたうえでAIに気持ちを預けるなら、私が見るポイントは3つです。

  1. 運営会社がどこの国にあり、データがどこに保管されるかを明示しているか
  2. 入力した内容が学習に使われるかどうか、使われる場合に止められるかが書いてあるか
  3. 医療の代わりではない、と自分たちで明記しているか

3番目を挙げるのは意外に思われるかもしれません。ですが、効果を強く謳うサービスほど、私は警戒します。心の状態に「効く」と言い切れるものは、本来そう多くないはずです。

このうち1と2を、実際にアプリのプライバシーポリシーまで読んで確認した記事を、以前に書いています。運営会社の所在、通信と保管の暗号化、ChatGPTに直接書く場合との違いを、そこで比較しました。この記事の続きとして読むと、判断しやすいと思います。

🔍 データの扱いまで確かめてから決めたい方へ

上の3つの基準は、実際に調べないと答えが出ません。
運営会社の所在、データの保管と暗号化、ChatGPTに直接書く場合との違いを、規約まで読んで確認しました。
読んだうえで、使わないと決めるのも一つの答えだと思います。

※同じサイト内の記事です。広告を含みます。読み終えたら、このページに戻れます

そして最後にもう一度書きますが、AIも専用アプリも、専門家の代わりにはなりません。これは、どちらを選んでも変わらない前提です。


まとめ

  • AIに相談してはいけないのは話題ではなく、越えると戻れない3つの線
  • 「落ち込んでいる」は法的に要配慮個人情報ではないが、診断名や通院歴を書けば該当しうる。そして、そこが一番書きたくなる
  • Scienceに掲載された研究では、AIは人間より平均49%多くユーザーの行動を肯定し、有害または違法な行為でも47%は肯定した
  • 迎合的なAIとやりとりした人は、自分が正しいという確信が強まり、謝る意欲が下がった。それでも、より信頼できると評価した
  • 消費者委員会に提出された資料では、対話型AIへの依存は行為依存と人間関係依存が重なったものと整理され、都合の良い物語の維持に迎合性が使われうると指摘されている
  • 対人不安の傾向がある人ほどAIを選びやすく、脆弱な立場の人ほど依存しやすい可能性がある
  • 行政では「迷ったら個人情報を入れない」がルール化されている。個人にはないので、自分で線を引くしかない
  • ただし、AI依存の研究はまだ散発的で、確立された物差しはない。断定できる段階ではない

引っかかった点

書きながら、自分でも整理しきれなかったところを残しておきます。

ひとつは、迎合性への対処として「反対の意見も出して」と書いたことです。これは効くと思っている一方で、そう指示できる状態の人は、そもそもあまり困っていないのではないか、とも思いました。本当にしんどいときは、肯定してほしくて使うわけで、わざわざ反論を求めないでしょう。ここは、うまい答えを出せませんでした。

もうひとつは、要配慮個人情報の線引きです。法律上は「落ち込んでいる」は該当しない。でも、当人にとっての機微さは診断名と変わりません。法律の区分と実感がずれている領域で、私は法律の側だけを説明しました。それが読者にとって実用的かどうかは、正直まだ判断がついていません。

最後に、この記事の構造そのものです。不安を説明してから選択肢を出す形は、批判されている構造と同じです。自己言及を入れることで誠実になったつもりでいますが、それも一種の技法だと言われれば、返す言葉はありません。

参考にした一次資料

リンク先は、いずれも2026年8月12日に筆者が実際に開いて確認したものです。

  • 内閣府 消費者委員会「人工知能(AI)技術の利用と消費者問題に関する専門調査会」第4回(2026年6月4日)資料2-1「対話型AIに対する依存 ーカウンセリングの文脈での使用の危険性ー」龍谷大学 野村竜也
    資料PDF専門調査会のページ
  • デジタル庁 デジタル社会推進標準ガイドライン DS-920「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」(2025年5月27日 初版、2026年6月12日 改定。デジタル社会推進会議幹事会決定)
    デジタル社会推進標準ガイドライン一覧(PDFのURLは改定のたびに変わるため、一覧ページを載せています)
  • 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
    ガイドライン(通則編)
  • Myra Cheng ほか “Sycophantic AI decreases prosocial intentions and promotes dependence” Science(2026年3月28日)
    Science(DOI: 10.1126/science.aec8352) ※本文は有料。本記事の数値は報道2社で照合しています
  • OpenAIの公表内容を報じた報道(2025年10月28日)
    ITmedia NEWS ※OpenAIの公式ページは筆者の環境から取得できなかったため、報道を挙げています

なお、この論文にはarXivのプレプリント版もありますが、掲載版と数値が違います。プレプリントは11モデル・50%・実験2本でN=1,604、Science掲載版は49%・実験3本でN=2,405。本記事が使っているのは掲載版の数値です。プレプリントを読むときは注意してください。

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